★3 | テレグラフ・ヒルの家(1951/米) | 波乱万丈の変転の結果ようやくありついた安寧な暮らしに待っていたものが実に怖い。舞台となる家が高台にある。これがストーリー的にも風景的にも抜群の効果をもたらす。ひとつの餌を取り合う複数の蟻たちという例えは言い過ぎかもしれないが、その切迫感がノワールの香りを醸す。 | [投票] |
★5 | パラサイト 半地下の家族(2019/韓国) | 人物を型通りに造形したことでストーリーのエンジンとして使いやすくし、加速もコーナリングも思いのままに操った運転能力に賛嘆のほかない。舞台となる豪邸の造形もすごいが、この豪邸から寄生家族の自宅に戻る道への下降感覚が強烈で、消えゆく中間層へのレクイエムとしてのこの作品の性格が実に露わだ。 | [投票(5)] |
★4 | スターウォーズ スカイウォーカーの夜明け(2019/米) | 世界の様々な神話伝説を参考にして作られた物語らしい大団円。死後に残る霊格、宝を守る蛇、夢幻の交信。そして「繰り返しあらわれる構造」。大国主命の根の国行きと海幸山幸が同じ構造なのと何ひとつ変わらない。これが良いのだ。40年にわたり特撮技術をリードし続けた貢献にも感謝。 | [投票(2)] |
★3 | ゴジラ キング・オブ・モンスターズ(2019/米) | 雑味、エグミは多々あるが、まずは空想生物をここまで生体っぽく見せた工夫には拍手をしたい。前作と違い最初から力みかえった演出に難があるが、特撮映像としての凄みは立派なものだ。ただ人物については評価の埒外であることは付言しておきます。メッセージ性を読む作品でもない。 | [投票] |
★3 | マルタの鷹(1931/米) | 3回の映画化の中では最も原作に近い。とはいうもののやはりヒューストン作品が上。出演者の重厚感が違う。冒頭いきなりシルエットでキスシーンが描かれている。にやけてチャラいサム・スペード登場の名場面だ。進行はきびきびして好ましい。 | [投票] |
★3 | 朱雀門(1957/日) | 家女房という堂上文化が説得力をもって描かれないので映画としては弱い。しかし撮影に限って言えば実に素晴らしい。雨や霧の使い方の効果、藤色や卵色の中間色使いのセンス、場面を一瞬にして説明する俯瞰や引きのシーン。照明や美術とのチームワークは比類ない。 | [投票] |
★4 | 毒の影(1953/仏) | 北アフリカの仏植民地という舞台で、秘密工作員と悪党と酒とファム・ファタールと銃が乱舞する。それだけで映画は十分である。原作の風土が似ているためか、ボンド・シリーズにも通じるストーリー・テリングの滑走感があって面白い。主人公のドライさとエロさも似ている。 | [投票] |
★3 | セシールは死んだ(1944/仏) | ドイツ占領時代のフランス作品。時代の影のなさは、相当の検閲の時代だったことを想像させるが、若いフランス女がからかいの対象になっているあたりが、心に余裕のなかった時代の作品と言えなくはない。タンデムツーリングする夫婦の登場など自転車大国フランスの片りんを垣間見せる。作品は並み。 | [投票] |
★3 | センセイの鞄(2003/日) | ときに演出が定型に流れ、どのショットの照明も被写体を浮かび上がらせる光量を超えて過剰に飛び跳ね回っており、仕上がりに疑問符はつくが、鑑賞の対象にしにくい恋模様を描こうという意志は明確だ。小泉今日子のとぼけた顔が主役の茫洋さをうまく表わす。とにかく可愛い。 [review] | [投票] |
★4 | 恋の秋(1998/仏) | うまい。そしてそれをひけらかさない。40歳を超えたいい年をした大人の恋愛をとても軽やかにかつさらりとした味わいに仕上げた。文学臭のするセリフが浮き上がらず、違和感なく日常性に溶け込む技を保持する者は、後にも先にもエリック・ロメールただ一人。 | [投票(1)] |
★2 | スノーデン(2016/米=仏=独) | つまらなかった。「これくらいのこと政府は当然やるよな今さら驚くほどのことじゃないし」的な眠った感性にがつんと揺さぶりをかけるだけの危機意識をこの作品に期待したのだが。この程度のエピソードの集積では発火点までには至らない。 | [投票(1)] |
★5 | ミッション:インポッシブル/フォールアウト(2018/米) | スパイ・アクションとしては最高の出来栄えだろう。どこまでが生撮りでどこからが特撮なのか判別したい気も失せるくらいシーンに没頭できる。ロケ地の協力をここまで引き出せるリーダーシップにも感動した。色事とグルメに走らないストイックさが、007シリーズとの最大の違いか。 | [投票(3)] |
★2 | インフェルノ(2016/米) | 実に平板。考古学的関心や美術史的興味を程よく刺激して見せるところが、本シリーズの唯ひとつの取り柄だったはずだが、そこがおざなりなので、つまらない。撮影もカラっ下手。誰が映っているかよく分からないショットすら見かけられた。 | [投票(1)] |
★4 | この世界の片隅に(2016/日) | 緩徐楽章が第1楽章に置かれた交響曲のような作りで、前半の淡々としたテンポがしだいに急速調子になる加減が上手い。すずが被弾したシーンなどはアニメならではできない表現なので深く感心した。声高に「反戦」を連呼せず、気の利いたユーモアの挿入がそれをもっと効果的に伝えている。 | [投票(2)] |
★1 | 家の中の見知らぬもの(1942/仏) | 容疑者が子供たちばかりなのでスケール感に乏しい。昼行燈の裁き役も、ラストの迫力だけは及第点だが、前半しどころがなさすぎ。そもそも、ここまで警察=検察が間抜けなわけないのでストーリーも盛り上がらず。 | [投票] |
★3 | ザ・スクエア 思いやりの聖域(2017/スウェーデン=独=仏=デンマーク) | 予測はずれの事態の連続に戸惑うのは主人公だけでなく、本作を観る我々も同様。可笑しくもあり怖くもある両義的状況は、他の映画では得られなかった新鮮な体験だったが、ここまで長尺にされると、鑑賞後の疲れがめっぽう溜まる。構図の素晴らしさは超A級。 | [投票(3)] |
★2 | シャーロック・ホームズ(2009/米) | グラフィックの感覚を感じる。スチール写真として見ると良い出来ということ。しかしこれが映画の面白さかといえば当然違う。手数ばかり費やす、まがい物の活劇だった。 | [投票(2)] |
★3 | アウトロー(2012/米) | どこを切ってもうま味たっぷり。ひたすらに堅実さを追求した良心作。古典的なヤマ場作りに唸る。トム・クルーズが知られ尽くしたスターであることで抜群の安定感が生まれる。デュバルの使い方も泣けた。 | [投票(1)] |
★4 | 罠(1939/仏) | 友人の失踪捜査に協力する気丈な踊り子(マリー・デア初見。美しい!)を主軸に、描写の行き届いた登場人物が数多く交錯し飽きさせない。ユーモアに満ちたシーンからサスペンスへと移る振幅の幅が広い。主役が大嫌いなシュヴァリエでなければ、もっと乗れた。 | [投票] |
★4 | アリバイ(1937/仏) | ノワールの無駄のない効率的な画面運びと、フランス御得意の下町恋愛ものが違和感なく合体。ライティングにより、人物像が実に分かりやすく浮かび上がる。お手本と言える出来栄え。シュトロハイムとジューヴェの揃う画面は実に重厚。 | [投票] |