★2 | 激動の昭和史 軍閥(1970/日) | 陸軍と海軍の組織の壁の厚さの描写には、これまでの東宝作品にはない踏み込んだ独自性を感じた。しかし、東条英機筆頭に人物を主題にした映画として観ると凡作以下になる。テレビの歴史ドキュメント番組の挿入映像並みの浅薄さが露わだった。 | [投票(1)] |
★3 | 昭和残侠伝 唐獅子仁義(1969/日) | 夜景のミディアムショットから血の滴る長ドスのアップに移る冒頭部叙述の手順は、マキノ雅裕の新たな進歩を感じさせた。言わずとも分かり合うという任侠世界の醍醐味はそのままに、アクションの挿入は意表を突く。また進行のテンポは速くなっている、。 | [投票] |
★3 | 爛(1962/日) | 都市と村落、正妻と二号、堅実と放埓といった座標軸の世界で、輝く方向に女が惹かれていく筋書きは画一的である。対照的にかつ意図的に叔母と姪が規格外に艶めかしく、見慣れた若尾よりも細腰の水谷良重に驚いた。微熱を孕んだ好奇心の表現が既に達人芸の域。 [review] | [投票] |
★2 | メメント(2000/米) | この映画は「私は映画だ」と終始つぶやき続けている。キモであるはずのものが邪魔である。最後に謎解きが描かれるか描かれないかは50:50の賭けだったが、なんと⇒ [review] | [投票] |
★4 | 座頭市牢破り(1967/日) | このシリーズ、黒澤時代劇や東映任侠映画からの影響が多分にあるのだが、盲目というハンディに由来する差別、それをばねにした反骨精神という独自の成分を含んでおり、それが他社作品群にない味になっている。今回山本薩夫に率いられてその味が一層濃い。 [review] | [投票(2)] |
★4 | 旗本退屈男 謎の珊瑚屋敷(1962/日) | 中川信夫の工夫がよい。犯罪がいつもよりこじんまりした分、せわしなさが消えた。脇役たちまで生き生きしている。品川隆二や小畑絹子もいいがやはり水谷良重。川釣りのシーン、木場の殺陣の直前シーンは名場面。艶っぽい退屈男を堪能した。 | [投票] |
★3 | 魔界転生(1981/日) | 脚本の作り方やリズム、キャラの立て方が、映画史への貢献以上に漫画やアニメの手本になったのではなかろうか。『北斗の拳』『鬼滅の刃』などにこの映画の面影を感じるのは錯覚か。映画のリズムに疑問符はつくが、ラスト20分には、降参するしかない。 | [投票] |
★1 | ゲゾラ・ガニメ・カメーバ 決戦!南海の大怪獣(1970/日) | 封切り時観て子供心に失望した記憶を確認したくて再見。理由判明。侵略宇宙生物が、ウルトラセブンの宇宙人より魅力がなかった。さらに俳優達に華がなかった。怪獣のスケール感と動きのとろさが許せなかった。クモンガやカマキラスほどの新味があれば2だったが。 | [投票] |
★3 | 座頭市御用旅(1972/日) | よくできたストーリーで、座頭市が耐えに耐える。祭りの売り物や火を使ったラストの殺陣も凝ったもので記憶に残る。一方宿場の連なり、家々の調度、木立などのセットが撮影を想定して計算されたとはいえず、その撮影も間に合わせ感が強い。 | [投票] |
★3 | 透明人間(1954/日) | ピエロ姿を選んだ男の悲しげな顔に、戦争で人生を狂わされた人たちの恨みが反映される。盲目の少女との交流などお涙頂戴劇だが、それでも、透明人間の初登場の瞬間やスクーターを動かすシーンには見ごたえがある。ダンスホールの見世物など風俗面でも面白い。 | [投票] |
★4 | 関心領域(2023/米=英=ポーランド) | ナチスに忠良な国民の家族団らんの風景。登場人物たちに対する共感ができない撮り方になっている。バストショットすらない。主役の家の庭のなんという平和さ。収容所の側は高い塀と銃声と悲鳴で描かれるだけ。隣接する天国と地獄の落差がすさまじい。 | [投票] |
★3 | 黒い画集 ある遭難(1961/日) | 3人の足の運びが演技になっている。制作の喜びにあふれているような素直な活力ある映画であった。山岳ロケ撮影の出来栄えがいい上に、適切なセット撮りが観客の状況理解を促進する。都会のシーンや天津敏の登場など単調化リスクヘッジも効いた。 | [投票(1)] |
★2 | 火口のふたり(2019/日) | 恥と悔恨を重ねて人は成長する。二人は互いの恥と悔恨を理解していることが分かるように描かれている。鬱屈を伴う反省の鏡像関係。その結果として性交描写から官能性が喪失する。重い意味を持たされた性交の繰り返しに観客は疲れて飽きてくるだろう。 [review] | [投票] |
★3 | 銀座カンカン娘(1949/日) | 豊穣の未来を感じさせる力。日本を再建させた世代の地の底からの明るさがまぶしい。堂々と悪漢と喧嘩する高峰秀子、大きく口を開けて笑う笠置シヅ子、まぎれもない戦後の証。志ん生を一席聴けるお楽しみもつく。 | [投票(2)] |
★2 | 彼女がその名を知らない鳥たち(2017/日) | どの俳優も喜んで各役々を引き受けたであろうことが想像できる。自分のイメージを変えてくれる役に挑戦したいのが俳優だ。キャラ立ちの急ぎ過ぎ、役者へのおもねりの強すぎで鼻白む。味濃い演出に溺れた印象が強い。 | [投票] |
★4 | 昭和残侠伝 血染の唐獅子(1967/日) | マキノの宝刀炸裂。夜景の中の点光源。俯角と仰角のバリエーションで生まれる和室の中の多彩な構図。正確無比のカットインアクション。宿命に耐える時代遅れの女達。祭日の夜の殺戮はなぜ観客を泣かせるのか。この映画が答えを出してくれる。 [review] | [投票] |
★3 | 蛇の道(1997/日) | 気付くと食べ物にびっしりとカビが生えていたような質感。娘を惨殺された香川照之の、怒りで赤く支離滅裂になった心。そこに、子供っぽい依存心が混入して実に気持ち悪い。同時に、支援者哀川翔の数式のように整った透明な殺意も薄気味悪い。 | [投票(1)] |
★3 | 蛇の道(2024/仏=日=ベルギー) | 誰が殺したかを解決するために考え出された恐ろしい真犯人追及ゲーム。しかし、この映画の真の恐ろしさは、2人の手口でも、人格でもない。プロットを作る時に採った監督自身のスタンス。悪事の露見を全く懸念しない神経が登場人物と同位相であることが真に怖い。 | [投票(1)] |
★3 | マスカレード・ナイト(2021/日) | けれん味たっぷりの犯罪が派手な設定で描かれる事態が前作以上に徹底されている。ホテル利用の虚構性という主題の反映と思えば似つかわしいかもしれない。前回試聴を前提とするテレビ演出の緊張感のなさは相変わらす。しかし長澤まさみが役の本質をつかみ立派。 | [投票] |
★3 | フォロウィング(1998/英) | インディーズ風にノワールが作られた。この点は新鮮だ。時間の順逆の操作がないと観客を騙せないのもわかる。ただしそれで映画作成の深奥を探り当てた印象は持てず、単なる上っ面の実験劇に終わっている。 | [投票] |