[コメント] ブレッド&ローズ(2000/英=独=スペイン)
映画を見終った人むけのレビューです。
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職場闘争を見たこともない私達にも、彼女達の葛藤が痛いほど分かる。なぜなら、矛盾のない職場なんてどこにもないから。 労働運動の目指す未来は、労働者を賃金労働から解放するってところにあると思うから。 この映画で見たことは、その長い長い道のりの途中だ。 つまり、この闘いがなければ、階級支配を乗り越えて新しい社会を創造するチャンスは永遠にこない。
組織する―。これがどれだけ大変なことか、時間をかけて丁寧に描いている。そして、いったん組織したら、それを守る戦いが長く続く。 労組が出来てしまう、それだけでも、敵にとっては将来の損失に繋がることだから、猛烈に攻撃を加えてくる。 不当解雇や、買収で切り崩しにかかってくる。 ここで、大切なのは、その闘う作戦の立て方なんだと思う。 それは、労働の現場で、特に、不法就労している移民労働者とじかに接しているサムだからこそ出来たことなんじゃないかと思う。
サムの作戦は、ビルのオーナー(銀行)に圧力をかけることだった。 マヤたちを束ねている清掃業者は、大手とはいわれていても地位的には弱い。 なぜなら、それを管理している銀行は、この清掃業者を偽装倒産させて、労働者を総入れ替えすることができるからだ。 本編に登場する既成の労組本部の姿はいずれも、ほぼこれに近いものだが、現場で、サムのように組合を組織し、運動を引っ張っているものたちは、失敗して労働者により大きな被害が及ぶことを常に恐れながらも、前へ前へと進んでいく。 そこにしか、未来がないからだ。
職場で受けてる嫌がらせ、ビルのガードマン、機動隊の有様まで、世界中どこにも同じ光景があるなんて、逆にうれしくなってしまうじゃないか? なに、本当の闘いはこれからだという気がする。 だけど、このビルでの社会保険闘争を自力で最後まで闘い抜いて、ついに、権力からの譲歩を引き出した。それが、次なる闘いへの大きなステップになるんだと思う。
最後に、とても重要なことなんだけど。 ローサが、体を売って、家にお金を送っていたという事実も、たとえマヤは知らなくても親は知っていたはず。 ケチな強盗で、強制送還になっちゃうマヤだけど、故郷へ帰ってやることがあるんだって、多分思ってるんじゃないかと。 ふと、そんな希望がわいた。
というわけで、ケン・ローチの映画は、どうしてもその背景を知らずには理解しきれないという性質を持ってて、人に勉強する気を起こさせずにはおかないから、ありがたいなって思える。 それで、アタシは何をやっているんだって気にもさせられるしね。
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