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[コメント] 秘密と嘘(1996/英=仏)

人生は不公平。貧乏クジをひく人間は必ずいる。映画の中の人達は、 一見、成功者と敗残者に別れているような、人種や職種に線引きがされ ているように見える。しかしどんな人間も、幸福と不幸を背負って生きざるをえない。例えホーテンスの寛容が、理想であったとしても泣けてしまう。
Linus

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







2度目の観賞。以下、気づいたことをメモ風に書いてみる。

1)この監督は『ネイキッド』という映画を撮っているが、 今作では、エロティックな部分を意図的に排除している。 が、しかし、母は男にだらしなく、愛に飢えているというキャラクター。 それを象徴するシーンとして、下着姿のまま鏡の前に立ち、顔にクリームを 塗るが、やがてその手が、だんだん下に降りていく。この後、 何が起こるかは、観客に委ねている。見事な省略。

2)母は、黒人娘の父親だけは明かさない。これは、「差別ではないけど、 黒人とは一度も寝たことがない」と断言し、それから、ハッ!と 気づいたような顔になるのは、レイプされて生まれたのが、この娘 なのではないか? この映画では、もしかして、明らかにされていない、 秘密が、まだまだ隠されているのかもしれない。

3)というのも、弟の妻は、母(モーリスの姉)に「あなたは、 父と弟を奪った」と罵られるから。この言葉が意味するところは、映画では、まるきり描かれていない。なんだか、複雑な家庭のようである。

4)そして、もう一つは、写真屋に勤める女が、ラスト間際「モーリス。あなたみたいな素敵な父親が欲しかった」と言う台詞があるように、この女性にも、家族しか持ち得ない秘密が隠されているようだ。

5)バーベキュー・シーンにて、妹は、ポテトにバターと カラシをつけて食べ、「アメリカ人みたいね」と突っ込まれる。 それが、やがて、父親がアメリカ人だと明かされる伏線になって いる。

6)イギリスは、労働者階級と中上流階級がはっきりしている国だと、 見聞する。労働者階級に、意図的に煙草を吸わせるところを見ると、 姉は、人種は黒人だが、ミドルクラスであるのだろう。 言葉で説明せず、車の所有と煙草を吸わないことで、階級を表現する 上手さ。

改めて、洗練された脚本に舌を巻く。

(評価:★5)

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