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[コメント] 魔界転生(2003/日)

城攻めや大名行列はリアルに丁寧に描かれ、四郎(窪塚洋介)やお品(麻生久美子)の妖気は衣装とメイクと照明に負わせGCは最小限にとどめられる。現世と魔界をつなぐために何を見せて、何をしてはいけないかを平山は心得ている。しかし、・・・
ぽんしゅう

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
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この物語を映画化するに際して最も重要なポイント。それは、転生し復活する者たちの動機と目的に、現代を生きる私たちが共感しカタルシスを得られるかどうかにかかっていたはずだ。

虐げられた者たちの苦悩や、思いを遂げられなかった者たちの無念さを大上段に振りかざしたところで今の平和ボケ・ニッポンでは空振りするのは目に見えている。そこで平山秀幸監督と脚本の奥寺佐渡子は、平和ボケを逆手にとってその動機と目的を「個の回復と獲得」に設定する。

泰平の制度に安住し個人の意思と責任を見失ったかに見える現代人へのアンチテーゼ。天草四郎には「天下を治めるものは神でも徳川でもなく真に力を持つ者だ」と言わしめ、それぞれの復活者には「無念をはらすため」ではなく「真の自分を回復するため」に転生させる。

しかし肝心の、体制と名声に守られて囲碁にうつつを抜す柳生十兵衛(佐藤浩市)が魔界の復活者との対決を経て、殺人剣の使い手たる己の本性を取り戻すというドラマの軸がまったく浮き立ってこない。

本来、平山・奥寺コンビは、その毒の抽出と提示を目指したはずであり、平山の力を持ってすればそれは可能であったはずだ。平山秀幸ファンとしては、この作品が作者の企んだ現代への警告と挑発を明示しきれず手馴れたエンターテインメントの域にとどまってしまったのが誠に残念である。

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (7 人)ロープブレーク[*] 死ぬまでシネマ[*] トシ Walden[*] sawa:38[*] 水那岐[*] TOBBY[*]

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