コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] 女の一生(1962/日)

出来れば長尺でじっくりと味わいたい魅力ある作品。
sawa:38

「悪人」らしい悪人が存在しないのである。あるのは出来すぎた「女」と平凡な人々の二種類の人間だけによって本作は成り立っているのだ。

だから怖い。だからこそ面白い。

少女は貧乏な境遇から成り上がっていった。だが、よくある話と違うところは、権力やら金の為に生きたのではないというところであろう。善と悪の対立というありきたりな構図でないにも関わらず、孤立し悲劇を生む。彼女なりの一生懸命さが、本来の家を継ぐべき者たちのエネルギーを吸い取ってしまったかのようである。

この明治38年から昭和20年に至る激動の年月を描いた本作は、とてつもなく面白い。ただ惜しむらくは、その1時間半という短尺にある。登場人物たちとの心のヒダが如何にして徐々に軋んでいくのか?ここにこのミニ大河の見所があるのに、この短尺ではそこが大きく省略されてしまっている。

特に小沢栄太郎の許されぬ思慕の情を前半でたっぷりと描き切らないが故、後半での彼の一生を賭けた人生が軽くなってしまう。また夫である高橋昌也の疎外感そして劣等感も前半での描き込みが欠如し過ぎていた。

但し、それでも充分過ぎる程面白かったのは原作・演出が優れているからか?さらに京マチ子という女優の素晴らしい演技による賜物なのか?

いずれにしても、3時間の長尺の大作にしても充分な力量のある作品である。

(評価:★4)

投票

このコメントを気に入った人達 (1 人)寒山拾得[*]

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。