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[コメント] 友だちのうちはどこ?(1987/イラン)

子供は社会にとって“未来”そのもの。大人は子供に何を、どう託すのかということ。友だちのために迷いさまよう心優しき少年が、唯一大人からもらったものは一輪の花。無造作に道端の花を摘んで少年に託したのは“今”を嘆きつつも“過去”を誇りに生きる老職人。
ぽんしゅう

教師も、母親も、祖母も、祖父も大人たちはみな、子供に硬直的な価値を、高圧的に押し付ける。その理由を「規律を守る大人になって欲しいからだ」と口々に語る。内政ではイラン革命から10年足らず、対外的にはイラン・イラク戦争のさなか。価値の変転と揺らぎ、世情の不安のなか、大人たちは“見るべき未来”を見失い、子供たちを導く自信を失っているかのようだ。アッバス・キアロスタミは、そんな大人たちの迷いを、子供の“無垢”な心情を通してやんわりと指摘する。

かつて町じゅうの家のドアは木製だったと年老いた木工職人は言う。現役の職人は鉄製のドアは一生壊れないと豪語する。ドアとは閉ざすためのものだろうか。それとも開くためのものだろうか。キアロスタミの「ドアの映画」は、そんなことを問いかけているように思えた。

(評価:★4)

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