とにかくファニー・アルダンが凄まじい。美しく、気高いマリア･カラスを熱演していたと思います。オペラの教養が全くない私でもオペラを生で体感したいという欲求に駆られました。

しかし白状すると、オペラシーンに入ると毎回眠気が襲ってきたのも事実です。それは私自身が無理に物語に入り込もうとして力んでいたからだと思うのです。私はカラスとオナシス、そしてジャッキーの三角関係は一般的知識というか、表層的な事実しか知らないし、そこにたどり着くまでの過程や彼らの心情などまで、詳しくは知りません。マリア･カラスの一生を知らない者が、何の前触れもなく唐突に、声も愛も失ったカラスの絶望を突きつけられても、そこにはとまどいしか生まれません。

まるで毛色の違うオープニング等、ラリー･ケリーのエピソードを端折ってでも、カラスの絶頂期の頃から話が展開していればもっと物語に入り込めたと思うし、カラスの絶望ももっと痛ましいくらいに感じられただろうし、それこそオペラ自体ももっと心に響いたと思います。よく出来た良質な映画だけに少し残念に思いました。

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04.11.15　記