[コメント] 麻雀放浪記(1984/日)
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軽佻浮薄。それが1980年代の風潮であり、その中で邦画も軽いノリの作品がもてはやされるようになっていた。その中で突如現れたのが本作。決しておしゃれではない、裏の世界を描いた作品を、それら軽い作品を次々と投入していった角川春樹がプロデュースしての、文字通り博打的要素の強い作品だったのだが、まるで時代に逆行するかのような内容が逆に受け、角川春樹の眼力の確かさを証明するかのような作品となってしまった。 本作公開時、私は中学生。同級生の中にはもう麻雀を始めとして賭け事に手を染めている奴らも多かったが、真面目学生だった私は、そう言う奴らの“武勇伝”を鼻で笑っていたものだが、結果的に観たのは大学に入ってからだった。その頃には私もそれなりに麻雀出来るようになってたし、本作の原作である「麻雀放浪記 青春編」は大学のサークルの部室に置いてあったので、それも読んでた。
改めてビデオで観た本作は、原作を上手く咀嚼しつつ、演出の巧さで原作を越えた作品っぽい。やっぱり麻雀牌は本に書かれているものよりも、バンっと盤上に叩きつけられる感触があってこそ、やっぱり良い。勿論原作通りなので、どういう役が出来るのかは分かっていても、興奮した。
それに何より、キャラクタのはまり具合が絶妙。主人公の真田広之はこの当時まだ少年役が多いけど、それでも既に演技力はヴェテランの域にある。アクションが無くても充分演技力だけで見せられる実力を持っていた。それにやっぱりドサ健役の鹿賀丈史が見事。「ドサ健」と言われたら真っ先に鹿賀丈史の顔が浮かぶほどのはまり具合。余裕がある大人の顔しながら、実は常に切羽詰まった状況に右往左往しているドサ健の存在感は彼の演技あってのこと。女房役の大竹しのぶも良い。それにヴェテラン中のヴェテラン高品格が貫禄の演技を見せつける。ラストシーンは必見。いつの間にか最後は全部高品が引っさらっていってしまった。まあ見事見事。
1980年代の邦画って大部分は評価しないけど、1984年は不思議と好みの作品も多かったりする。この年は私の映画ライフにとっても貴重な年だとは言える。
尚、本作が監督デビューとなる和田誠だが、本職はイラストレイター。その美術感覚が存分に生かされたのも本作の強味だろう(それこそ成田亨の名人芸もあり)。なんでも元々は脚本の準備稿を依頼された和田が、カメラ位置なども詳細に書いたアメリカ式の“スクリプト”を提出したところ、それを読んで感心した角川春樹が監督も依頼したという逸話がある。まさにこの時代だからこそ誕生した監督であり、出来上がった作品であるとも言える。
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