[コメント] 北京ヴァイオリン(2002/中国=韓国)
驚異的な経済成長を遂げつつある中国の様々な人間模様が描かれていた。ハリウッド作品にはない素朴さが好きだ。急速に近代化している中国だが、映画までハリウッドをまねてほしくないと願うのだ。
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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中国の海岸部(東側)と内陸部の経済格差を描き、ヴァイオリンというブルジョワジーの専売特許のような特技を身につけた貧乏少年が、金持ち集団の中に斬り込んでいく映画だ。これは夢なのだ。貧乏に暮らす内陸部の人々にとっての夢のサクセスストーリーなのだ。いや、最終的には音楽コンクール代表を蹴ることによって、「地位や名声だけがすべてではない」と、貧乏国民にとって小気味よい形で、成金ブルジョワジー世界からの離脱を描いているので、サクセスとは言えないかもしれない。しかし、それが決してあの世界に入ることのできない彼らの必死の抵抗なのだ。入れないのではなく、入らないことこそが崇高な姿であると言わしめたいのだ。負け犬の遠吠えのようだが、駅で必死にヴァイオリンを弾く姿に崇高な何かを感じたのは事実だ。
息子を金持ち世界に入れたいという父親、金持ち世界に必死にしがみつこうとする女性、金持ち世界の裏を知りうまく立ち回る教師とそれができない不器用で純粋な教師。金持ち世界で生まれ、貧乏世界を知らない少女。そして、貧乏世界で純粋に育ち、金持ち世界を知ることで葛藤を知る少年。きっと今の中国の縮図なのかもしれない。
だから、この特技はヴァイオリンでなくてはならなかったのだ。
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