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[コメント] 新座頭市物語 折れた杖(1972/日)

あらためて考えてみると勝新って本編は実に3本しか監督していないのですね。テレビシリーズ「新・座頭市」での演出ぶりが強烈に焼きついることもあり、私としては監督としてのイメージが実際以上に膨らんでおりました。
ゑぎ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 さて一方この映画は長く日本映画界最長老監督(脚本家)だった犬塚稔の最後の映画化作品でもある。後年の犬塚100歳の時の著書「映画は陽炎の如く」の中で本作のことを次のように語っている。「その試写を見て、あまりにも幼稚な演出手法に私は無性に腹立たしかったのを覚えている....」。なるほどさもありなん。脚本家が地団駄踏むような奔放な演出、監督の個性の刻印こそが我々観客にとっての本作の魅力なのだ。

 確かに度々フラッシュバックする三味線弾きの老女の件のイメージがイマイチで、こゝは幼稚と云える(もっと云えば無い方がスッキリする)かもしれないが、まず、観音浦という名の浜辺の村及び廓町の造型が見事だし、『顔役』でも見せたエクストリーム・クローズアップと様々な遮蔽物でマスキングされた閉塞感ある画面が実にスリリングだ。プロットとしても普通ならこれが最終回じゃないか、というぐらい凄絶なものなのだが、撮影現場の創意によってその強度が高められていることがようく伝わってくる。また、クレジットを見た時点では悪役にビッグネームのないことが少し心配になったけれど、小池朝雄がオーバーアクトだが必死の演技で勝新に応えている。そしてラストに登場する大親分(飯岡助五郎)役の大滝秀治の扱いも面白い!こういう人を食った突き放しも本作のスケールの大きさに繋がっている。そして女優陣は遊女・太地喜和子、下女(少女)・吉沢京子、廓の女将に春川ますみとキャラクターの対比も効いていてなかなか楽しめるのだが、矢張り何と云っても勝新のお気に入り、太地喜和子の成熟した色香がたまりません。

#備忘で配役などを。

・冒頭の三味を持った老女はなんと伏見直江といういことだ。

・小池朝雄の子分には中村賀津雄がいる。太地に惚れた気の小さいヤクザ者。その他、藤岡重慶が目立つ役。他にチンピラで松山照夫がいる。またヤクザの用心棒が高城丈二だが、この人がイマイチ。

・吉沢京子を買う金持ちの商人(?)が青山良彦。小池朝雄らとも懇意なのだがこの人も中途半端な描かれ方だ。全体に吉沢の挿話が放りっばなし。

(評価:★4)

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