[コメント] 女囚と共に(1956/日)
映画を見終った人むけのレビューです。
これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
小杉義男の叔父に襲われる香川京子の件は残酷であり(手を合わせる香川)、この告白を受けての木暮実千代の「女だけがこんな目にあう」という科白に全てが凝縮されているだろう。もうひとつの、受刑者の社会復帰の難しさの訴えも木暮を嫌う面会に来た子供の残酷な件で示される。木暮と病気で死んじゃう安西郷子の化粧っけのない熱演が最も印象に残る(安西の死に目に会えなかった恋人加藤春哉もいい顔している)。
力作であり、力作はたいがい空振りになるもので、更生施設を扱う映画に空振りは多いものだが、本作はユーモアも効いた良作と思う。浪花千栄子は流石の巧みさで、千石規子、久我、津島と4人で居並ぶ雑居房のドタバタはなんかもの凄い。個人的にはここがベストの件。後にニッセイの小母さんで有名になる中北千枝子が保険の外交しているのが可笑しく、彼女でトップとラストをサンドイッチする構成は良好。女の不幸を演じ続け『夜の女たち』でパンパンも演じていた田中絹代が所長でいるのは意図あるキャスティングに違いない。
ただ、終盤は久我美子の改心がイマイチ唐突で名作になり損ねた。レズビアンは女だけの監獄での一時的な病と見做されているし、津島恵子の久我への恋愛感情から凶行に走るレズビアン造形は、香川の結婚式と保守的に対照されてしまっている。時代の限界という感想。
受刑者たちが乳児を伴っており保育室があり、「あたしも刑務所で生まれたんだ」という科白があるのは驚き。厚生省課長が来るというので演芸会が開かれるという忖度は官官接待みたいなものでいやに生々しく、受刑者たちはいつ舞台の練習をしたんだろうかという疑問が湧いてしまうのは失点。
(評価:
)投票
このコメントを気に入った人達 (0 人) | 投票はまだありません |
コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。