[コメント] 日本海大海戦(1969/日)
映画を見終った人むけのレビューです。
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この海戦で東郷が試みた丁字戦法=東郷ターンは世界の戦術史に残る戦法である。娯楽映画として見た場合、当然クライマックスであるべきはずだろう。だが何故だか、「あっさり」と描かれてしまった事に強い不満を感じる。
特撮は円谷の技術の集大成的な完璧(?)な出来上がりと言っても良い。ただし海戦シーンは全て円谷に任せきってしまっている感がある。それによって人物が描かれていないのだ。その時、東郷はどう判断したのか?ロシア側の反応は?作中で三船演じる東郷が言っている。「弾は勝手に命中してくれない、命中させた人間が凄いのだ(意訳)」
精巧なミニチュアワークは見事であろう。だからこそ、それに勝る人間ドラマが必要なのじゃないか?
PS.この日露の戦いで海軍は戦史に残る完全勝利を世界が注視する中で演じてみせた。東郷提督は世界的な英雄と祀り上げられ、特に当時ロシアからの圧迫を受けていたフィンランドやトルコといった国では親日ムードが高まり、それは現代でも通りの名やビールの名に「トーゴー」の名を残している。しかし、晩年の東郷は大艦巨砲の信奉者として老害を晒し、戦艦大和が完成する3年半前に死去した。
そして陸では乃木の無謀(無策)な人海突撃戦術で戦死者の山を築きながらも旅順要塞を陥落させたが故に、後の太平洋戦争においても40年前と変わらぬ戦法を採らざるを得なかった。
この作品ではラストに「次はアメリカだろう」という暗示で終わっている。誰もが知っている太平洋戦争の結末の敗因は、東郷と乃木の勝利が遠因になっているという歴史の皮肉がある。ラストで東郷提督の心の痛みを描くのならば、その辺りの事も知っていなければアンバランスであるかも知れない。
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