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[コメント] イースト/ウエスト 遙かなる祖国(1999/ブルガリア=仏=露=スペイン=ウクライナ)

愛の物語というよりは、自分達を騙した体制への復讐劇と見えた。
kazby

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







そもそも、命からがらいったんは亡命した人たちを再び呼び寄せた広告とは、誰もが持つ祖国へ帰りたいという気持ちに訴える、巧妙で、それほど、魅力的なものだったに違いない。しかも、西側に居て、鉄のカーテンの向こう側の姿を、十分に知ることができなかったのだ。 この失望は大きいし、政府に対する憎しみは相当なものだったと思う。何も知らない、フランス人の妻と子供まで、連れてきてしまったのに。それが、動機だ。

サーシャ(セルゲイ・ボロドフ・Jr)は、きっとそうやって逃げるんじゃないかと思っていたけど(この若者の葛藤を表現するには、この素人っぽい役者さんには、荷が重かったのでは?いや、逆に、全体の重苦しさを緩和しているか?)...。 妻子が、フランスへ逃げて、アレクセイ(オレグ・メンシコフ)が流刑で済んだのは、インテリで、共産党での地位も高かったから。 加えて、キエフ時代の工場長(鉄のような人だが)のアレクセイへの情が普通ではなかったから。アレクセイは、それらをみんな計算に入れていた。 ところが、金も、コネも、体力も、忍耐力も、勇気も、全部あっても、成功するかどうかは、やってみなければわからない。 成功しても、周囲の人間に及ぶ迷惑を考えると、なかなかできないことだ。 周囲にそれと気付かれず、政府を怒らせないよう、監視が緩むよう、密告に熱心な同居人の女を手なずけて捨てる冷酷さも要求され、耳を澄ませ、ゴキブリのように平たくなって、じっと耐えて時期を待つ。 愛情だけで、決してこんなことできない。 だから、だから、あのラストのワン・シーンが、本当に素晴らしいと思える。

それで、実は、何が言いたいかというと。共産主義だから、こういうことが起こったんだという誤解が生まれないよう祈りたい。いわれのない抑圧と、これに対する闘いというものは、普遍的なものだと思うから。 作り手の意図と、違った意味で、利用されることのないようにと思う。

オレグ・メンシコフの個人のファン・サイト : http://homepage2.nifty.com/oleg/  デザインもとても美しく、情報満載です。

(評価:★5)

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