[コメント] 嵐を呼ぶ十八人(1963/日)
十八人の名前(役名)すらないガキどもが、疾走する画は何ものにも代えがたい。由来不明の勢い。吉田喜重によって、というよりむしろ偶然によって産まれた傑作か。
あいかわらず傑作であると思っているが万人にとってのそれではないようだ。にもかかわらず僕にとってはまぎれもなく傑作。
この映画のなにがすごいかというと、人と人とがわかり合わない、というのがすごい。早川保は少年たちとわかり合わないし、少年同士もわかり合わないし、香山美子と早川保もじっさいわかり合わない。寸止め。そのかわり「人間はいっしょにいるとなんとなく慣れてくる」という「結婚は情熱の堕落である」に匹敵する真理がにじみだしている。
われわれは往々にして、映画にわかりやすさ、カタルシスといったものを求めるが、それはリアルの生活が、わかりにくく(不条理で)、ダラダラと続く(日常性に浸かっている)、だからなのかもしれない。この映画に異様なリアリティを僕が感じるのは、そこをあえて(あるいはたまたま)フィルムに定着させているからで、登場人物はみんな動機不明瞭、ダラダラしたりイライラしたり、立ち尽くしたりしている。
この映画のダラダラやイライラに、僕は強烈な色気と奇妙さを感じる。それはこのさい言ってしまうが、ある種の「映画の奇跡」としか見えないのだが、皆さんはどうだろうか?
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