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[コメント] ヘンリー八世の私生活(1933/英)

すさまじいブラックユーモア集。自国の歴史をボロカスに扱って手加減がなく、この姿勢こそインテリジェンスの証だと言外に語っており、それは圧倒的に正しいと思わされる。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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もちろんイギリスは極端な国だが、しかしどの国も黒歴史は似たようなものでもあるだろう。コルタの出自がポーランドなのも示唆的だ。

冒頭から蔓延するブラックユーモアが素晴らしい。斬首刑される妃の異様に毅然とした佇まい(「渾名がつくんでしょうね、首なしアンって」「処刑人の腕はいいの」)と物見遊山な見物人(最後に反復される)、天然な次期妃との対比などやたら黒い。

以降も、王のジョークが痙攣した笑いを引き起こして遠く厨房までで伝わる件、夜這いの王を見つけて大声出し続ける衛兵、やたら理髪組合の評判を気にする王、虚勢が年代表記に続く次のカットで否定されるショット、狂った振りをし続けるエルザ・ランチェスター(見せ場多くて印象的)など、どれも面白く現代的。

後半は王の弱さを語り出し、チャールズ・ロートンの造形は見事なものでドラマとしていいものなんだろうが私は不満、最後までブラックで通してほしかった。撮影はすでにクレールの傑作を撮っているジョルジュ・ペリナールなのにイマイチ、構図は平凡だし、室内でふたり並べるときにひとりの顔が見えないショットが妙に多いのは不自由な印象がある。しかしこれらは些細なことだ。

(評価:★5)

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