[コメント] ゾンビ(1978/米=伊)
こっちはゾンビのコミカルさにウヒャウヒャ笑っているだけなのに、ふと気付くと絶望の極みに笑っているような変な高揚感を持たされる。そんな物を持ちたいなんて言った覚えもないのに。
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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前作に引き続いてのゾンビに頼り切らない筋立てが、他のホラー・スプラッタ映画との大きな差異になって表れている。ゾンビとの追いかけっこに終始せず、あくまでゾンビを軸にした周囲のドラマを観せていくことで、結果ゾンビの存在が「モンスター」ではなく「マスコット」のようになっているのが可笑しい。
実際物語の大半はゾンビによって紡がれるものではなく、人間自らの手によって転がっていく。慢心、物欲、暴走、油断。ゾンビたちはその存在理由も判然としないまま、ただそこに口を開けて立っているだけ。しかも弱い。にも関わらず物語全体には彼らの繁栄が巨大なばかりに影を落としているので、強烈な存在感を発している。
ゾンビに制圧されつつある世界という絶望の上に成り立った虚構の繁栄。しかもその繁栄を突き崩すのは守る側であるべき人間。ゾンビは色んな事象に置き換えて考えることができるし、登場人物の行動を自分に振り返ることもできる。またそれを一所懸命考えていると、今度はそれをコミカルなゾンビやロメロ自身にせせら笑われているような気分にもなってくる。こうなるともう出口がない。観た段階で負け試合。
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