[コメント] 女ばかりの夜(1961/日)
とは云え、特記すべき事項を列挙しておきます。まず、白菊婦人会という売春婦の更生施設の立地が、上り坂の上にある、というのは良い点だ。責任者は淡島千景。その代理のような役割を沢村貞子が務めていて、二人とも何とも胡散臭いキャラなのだ。体を売るのはどうしてダメか?と問われても、自信をもって返答することができないのだ。
主人公は原知佐子で、頑張って演じているのは伝わってくるが、少々分裂気味の造型だ。更生施設を出て最初に勤めるのは桂小金治と中北千枝子の夫婦がやっている酒屋。一所懸命仕事をしていたが、赤線にいたことがバレてしまい、中北に疎まれるようになる。すると、定休日に小金治と二人になった晩、原は豹変して、小金治を誘惑する。誘惑者としての原の演技は見ものではあるが、この変貌には唖然とする。ただし、二人の関係を知った中北のカット(階段から降りてくるカット)が全編で一番良いカットだと思った。
原の次の職場は機械工場。菅井きんが係長だ。ここでは、最初に、以前赤線にいたことを仲間に告げる。しかし、結局色眼鏡で見られ、女工たちから、男の道具として扱われるのだ。このシーケンスの原も、いきなり、かなりのズベ公に変貌する場面があって唖然とさせられる(土管のシーン)。
そして三つ目の職場は、バラ園。香川京子と平田昭彦が夫婦。もう一人、彼らの遠縁の夏木陽介と三人でやっている。皆、原の経歴を始めから知っているが、何の悪意もなく付き合ってくれる良い人たち。こゝでは夏木との恋愛が描かれるのだが、この恋の描き方もちょっと性急なのだ。
さて、原知佐子の顛末に沿って記述したが、更生施設の他のメンバーにも強烈に印象に残るキャラがいて、中でも、浪花千栄子は、59歳で梅毒が頭に回っているという役だ。同室の富永美沙子の寝床に入ってキスをするレズビアンでもある。この造型は当時としては、真面目に対処したものなのだろう。しかし、いつも通りの強烈な大阪弁と相まって、少々奇矯なキャラに描きすぎているようにも思えて来る。
あと、ラストの原知佐子の身の振りようと、その見せ方には、私は力強い肯定感を覚える。これは良い終わり方だと思う。
#備忘でその他配役等を記述します。
・更正施設のその他のメンバーには、北あけみ、関千恵子、千石規子がおり、原は北あけみと仲がいい。また途中で入所する春川ますみは大暴れする。施設の職員には岡村文子がいて、浪花千栄子が「白豚!」と云う。
・小金治の酒屋の店員−大村千吉に、原は城ヶ島に行かないかと誘われる。機械工場の女工員で、焼き入れの首謀者きみ子は、野川美子。原の昔の男は伊藤久哉。
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