[コメント] 25時(2002/米)
映画を見終った人むけのレビューです。
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主人公の名前=モンティは、往年の映画「陽のあたる場所」で主人公を演じたモンゴメリー・クリフトのファンだった母親が付けた、という作中の挿話があるけど、その原作がドライサーの「アメリカの悲劇」。
しかし、そのモンゴメリー・クリフト同様モンティの母親も早逝し、父親は「モンティなんて縁起の悪い名前だから、できればジェームズのような力強い名前が良かった」と言う。その名は、かつてのアメリカの典型的なヒーロー像そのものだったジェームズ・スチュアートを思い出させる。
ラスト、父親が語りかける「妄想」のなかで「モンティ」は「ジェームズ」として再生するが、それは最早かつての父権的な理想主義の時代のアメリカに対する郷愁でしかない。現実のモンティは痛々しく傷つけられたまま、為すすべもなくクルマに乗って運ばれて行く。
しかし、それを見送るマイノリティたち。ジェームズ・スチュワートの時代には問題にさえならなかったような人たち。かつてモンティがひとり鏡に向かってついた悪態の対象であった人たち。その彼らの笑顔の明るさ、暖かさはどうだろう?(やはりマイノリティである)プエルトリカンのナチュレルは、7年後だってきっと待ってる、そう思える空気感が、せめてもの救いだろうか。
脚本、演出、演技、撮影、と、すべてにおいて監督の明快な意図が貫かれた見事な作品だと思うし、とりわけ配役と演技は最上の部類だと思う。ただ音楽はしばしば画面に先走って感情を誘導するようなところがあって少し気になった。
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