コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] ほえる犬は噛まない(2000/韓国)

さえない日常を送るさえない奴等が巻き起こす、特に大した事ない事件!このぬるさ好きです(笑)見終わってから面白さと爽やかさがじわじわと広がりなぜか切なさも少々。。とにかくセンスが良い映画だ〜。
新人王赤星

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







さえない奴等がいいんです。

イ・ソンジェ は世渡り下手。勉強さえ出来れば教授になれると思ってたが現実はそうもいかず苦手な根回しはうまくいかず、賄賂の金も無いノイローゼなインテリ。ペ・ドゥナ は見るからにやりがいの無い、まるでお役所のような団地の事務職も要領よくこなせない。しかも夢は市民栄誉賞というささやかすぎる夢。

さえない日常もいい。

イ・ソンジェは身重の妻にはあしらわれ甲斐性の無いヒモ状態で、殺す犬も間違える始末。トイレットペーパーの長さにムキになるほど精神的に追い込まれている。ペ・ドゥナは友達とダラダラ煙草を吸い、ダラダラ酒を飲み(これがまたさえない青春て感じでいい)、上司にはどやされる。 

また、大した事件も起きないんだ(笑)。

唾吐き婆さんが残してくれたのは遺産かと思いきや切り干し大根だし、イ・ソンジェが犯人とばれそうだと思わせてばれないし、市民栄誉賞はおろかニュース映像さえカットされ挙句の果てにはクビだし。イ・ソンジェも教授の接待の後に事故死という社会批判メッセージかと思いきや電信柱の下で酔いつぶれてるだけだし。

しかしそれでも、襲う気の無い知的障害気味の浮浪者から犬を抱えて逃げる場面は、確かにサポーターが応援する価値のある大冒険だった。

イ・ソンジェは教授に賄賂を渡した後犬殺しの告白をする。すべてを失う恐れがあるのに。最後は世渡り下手できれいな身の自分のままでいたかったのか。まあ、ペ・ドゥナの間抜けっぷりにはばまれたけど。結局彼は夢である教授の座を手に入れた。しかし彼の目には達成感は無い。暗くなる教室から眺める美しい森の風景は、冒頭引きこもっていた陰鬱な日々の部屋から眺めていた時と同じく、彼にとって遠い景色だったのだ。必死になって出世したのと引き換えに何か汚れちゃった彼にとって。。対照的にクビになったペ・ドゥナはその森にハイキングに来ていた。その表情はイ・ソンジェと違ってとても清清しい。きっとクビになって焼け酒を飲んだ後「まあ嫌な事は忘れて森にでも行こうよ。屋上で煙草吸ってる時に眺めた森が綺麗だったじゃん」て感じのノリで行ったんだろうな。森で焼肉食いたいって話してたから本当に食うんだろうな。。

社会的立場を獲得するために薄汚れたルールに従うインテリの暗い心の葛藤と、社会的競争に上手く乗ることも出来ない無邪気な労働少女の朗らかさの対比が、押し付けがましくなく韓国都市部の日常の中で描写されている。

化粧っ気ゼロで無邪気な少年のような魅力を振りまいたペ・ドゥナがとにかく可愛かった。全編を疾走するJAZZもこのぬるい話に妙にマッチしてた。韓国映画って話の土台はきっちりしてる映画が多いってイメージだったけどこういうセンスの映画も出て来たか〜。日本だったらCMやPV上がりの人が作った映像だけに頼った映画になりそう。やっぱ韓国は映画アカデミーとかできっちり力入れてるからね。日本はうかうかしてたらライバル韓国に本気で抜かされるぞ〜。

(評価:★4)

投票

このコメントを気に入った人達 (6 人)ふかひれ おーい粗茶[*] 死ぬまでシネマ[*] NOM ペンクロフ[*] ホッチkiss[*]

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。