[コメント] 殺人の追憶(2003/韓国)
地を這う虫の恨み。
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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突然我が身に訪れた暴力への怒り、何かの間違いであって欲しいという願い、そういった被害者の無念を吸い込んでいき、または、何百何千という人影の中に身を隠し続ける犯人をいつも見下ろしている「空」。地べたを這うものは、被害者の最後の叫びや犯人の正体をその中へ拡散し続けているかのような空の無慈悲を激しく恨む。しかし空はただ冷たい雨を浴びせるだけなのだ。
不穏に渦巻く曇り空、高く深い紺色の空、監督の切り取る風景の中で、とりわけ空の表情のとらえ方には細心の配慮がなされているように思う。何があったのかせめて真実を知りたい、すべてを地面にひきずり降ろしてやりたい、と思うも手が届かない虚しさ、虚空をつかまされる悔しさ、そしてその絶望への恨(ハン)というものが、この作品の求心力なのではないだろうか。ラストで真犯人を「誰だかわからない」というよりも「誰でもある」と言ってのけたような、不可知な恐怖に支配された諦念や不安さを、監督は虚空になぞらえて描いて見せてくれたように思う。
それはそれとして、この作品の捜査官たちのキャラクターの出色なこと。ソ、パク2人の刑事は言うに及ばず、飛び蹴りのチョ刑事、2人の部長、紅一点のギオグ(<好き好き!)。このメンバーでシリーズものやって欲しいくらい。
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