このどんよりとした映像にはりつめる緊張感といったらなんだ？　犯人がだれとかそんなことを越えて胸ぐらつかんでくる迫力。

どの登場人物にも丁寧に描写される多面性。主人公の二人の人物設定の見事さはもちろんのこと、脇をしめる人物たちにも手を抜かない。たとえば、やたら暴力をふるう刑事のコンプレックスや失望が手に取るようにわかるシークエンスのすばらしいこと。

重要かもしれないこと。この映画は最後まで誰の視点で見ればいいかわからない。どの人物も最初はずいぶん遠く描かれる。二人の刑事が活躍するようになって、刑事たちの目で見ようとしても微妙にずらされる。私の目は被害者の目？もしかしたら犯人の目？

何もわからないまま、神の目になって映像を見ている私。・・・すべてが理解不能なのに神の目だって？

女子中学生が犠牲になるシーンが印象深い。運命のほんのちょっとのすれ違いで助かる女。

人の生や運命が、だれの手にもおえないほど厚く重く、理解不能だと気づかされる。理解不能であると知りながらそのまま人と社会を描いた映画。