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[コメント] ビッグ・フィッシュ(2003/米)

この偉大なる妄想癖じいさんはティム・バートンそのものなんだろう。
づん

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







観ている私ですら、年老いたエドワードが口を開こうとするだけでウンザリくる。愛されない人間を愛しく描くティム・バートンがなぜここまでウンザリくるほど妄想癖でホラ吹きのじいさんを描いたのか。確かに「魔女」や「スペクターという町」や「サーカス」などのディテールはバートンらしさでいっぱい。でも物語の主人公がバートンの描く主人公らしくない。バートンらしさが欠けてるよな・・・そう思っていたんですが。

このエドワードってもしかして、ティム・バートンそのものなんじゃ!

私たちは今まで彼の偉大なる妄想の果てに出来上がった作品にどれだけ心を動かされたか。そんなの実際ありえないよって話にどれだけ感動してきた事か。それが真実だろうが背びれ尾ひれが長く付いた妄想入り混じりの物語だろうが、そんなのどうでも良かったハズなのに。なぜ彼の話にイライラしたのか。バートンの自虐行為?いやいや、そんな事はない。バートンが好きだと公言している私が、実はあまりバートンの事を分かっていなかったというだけの事なんじゃないだろうか。

彼の映画を観ている時は常に「映画」の中の出来事だという事が頭の中にある。その限られた範囲の中で彼の妄想が爆発している。そう、アトラクションのようなもの。安心感というものの中で面白さが最大限に発揮される。それが今回、ほんの少しだけ現実的なストーリーになっている事で「安心感」という囲いが取っ払われてしまう。現実と非現実の境界線が非常に曖昧な事で私はいつもは感じ得なかった不安感を感じてしまったのだ。

バートンは映画の中だけで生きている訳ではない。「バットマン」も「ジャックやサリー」も「シザーハンズのエドワード」もみんな彼の中ではリアルであり、真実なんだろう。「映画」と割り切っていた私は本当のバートンを知らなかったに過ぎないのだきっと。

残念なのがあんなにも愛していると言ってやまなかった妻の事を、そんなに愛している風には見えなかった事。そこだけが非常に心残り。時間が止まるほどの出会いをし、恋をした。それが結婚した途端、何もかも色あせて見える。彼女にこそ最後まで偉大なる妄想の果ての物語を語って聞かせるべきだったのではないかと思う。

(評価:★4)

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