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[コメント] オアシス(2002/韓国)

中学生のころ、職場体験という夏休みの課題があって、1週間ほど身体障害者向けの福祉施設で身障者の身の回りの世話をしたことがあった。仔細は省くが、それ以来、はっきり言って身障者と接するのが苦手だ。
田邉 晴彦

それは相手側の問題ではなくて、彼・彼女の挙動に対して自分が無条件に抱いている“嫌悪感”と“差別意識”の存在をまざまざと実感させられて、「俺ってやつは…なんてケツの穴の小さい人間なんだろう…」と情けない気持ちにさせられるからである。ほんと、小さいんだ、人間が。

だからこそ、身障者を不誠実に美しく描くジャリタレの極刑もののメロドラマから 誠実に過ぎるドキュメンタリー作品まで、身障者を題材にした作品は積極的に避けてきた。ただ、本作については『シークレット・サンシャイン』の監督であり『冬の小鳥』の製作をつとめたイ・チャンドンの代表作ということで、非常に遅ればせながらアーカイブを探った次第である。

で、鑑賞の結果。。

ムン・ソリがオアシスの画の中から飛び出した風景の中でソル・ギョングと踊り、キスをして、帰ろうとする男に向かい切実にSEXがしたいと訴える様子をみて、不謹慎な言い方だけど、少し気が楽になった。

ノータリンだろうが、重度の脳性麻痺だろうが、男は男であり、女は女だ。愛を切実に求めてやまないその様は、自分と何ら変わらない、人間ひとりひとりの本来の姿だと感じた。

<補記> この映画を見て、「韓国における障害者差別」「相撲の成り立ち」「身障者の性」といったテーマについて少し勉強しました。映画を娯楽・エンターテインメントとして単純に捉える人は多いし、そういった側面を否定するつもりはないけれど、僕にとってはそれ以上に、映画=自分の日常の外の世界に対する興味や理解を促進してくれるインスピレーションの源泉なのです。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)けにろん[*]

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