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[コメント] キル・ビル Vol.2(2004/米)

もっとコンパクトに纏められる話である…というのは充分肯ける意見ではあるのだけれど、自分は敢えて三部作くらいにすることを提唱したかった。そうすれば盛り上がらぬままにラストバトルになだれ込むようなことにはならずに済んだ筈だ。
水那岐

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







大盛り上がり大会だった『Voi.1』に較べて、本作が明らかにあっけない終幕を迎えてしまったのは多くの人がが認めるところじゃないかと見る。オーレン石井(これ、石井お蓮とか書いたほうが粋な感じに思えたりするんだが)の大ボスとしての見事な闘いぶり…それはもちろん部下たちの闘いの指揮も含めてなのだが、彼女に匹敵する、いやせめて中ボスくらいのスケールの刺客の登場が今回の物語にはない。

バドは用心棒をやっているとはいえ、所詮小手先の技でブライドを一時は危機に陥れるだけの小物に過ぎない。アイパッチで貫禄充分のエルも、ブライドと同じくパイ・メイに師事したにもかかわらず、ろくなカンフー技も使わずに両目を潰されてのたうち回っておしまい、というテイタラクである(片目を失った理由など聞かされると、そのあまりの情けなさに涙を誘われる!)。ここはやはり、折角メキシコや中国ロケを行なったのであるなら、マカロニウエスタンのガンマンめいた刺客、カンフーの達人たる刺客が求められるところだろう。女嫌いのパイ・メイの弟子になることのできたエルなら、ブライドに伝授された奥義まではいかなくとも、相当の腕を見せてもらえるのが当然であろう。そして、それが今回のツボになってもよかったのではないか。(頑張ってるのは判るのだけれどね)

ビルがブライドの実子をひそかに育てていたというのは、実のところそんなに驚くべきことではないだろう。なんといっても児童人権先進国(?)のアメリカである。胎児まで殺してしまうとはずいぶんな冒険をやるもんだなあ、と自分は前作でいささか感嘆していたものだ。…ましてラスボスが情に訴えて主人公の首を真綿で締める、というのは大組織を敵にした戦闘ものの定石だ。その彼女と娘にやすらぎのひと時を与えておいて、あとで無慈悲な襲撃を仕掛けるのはいいのだが、それは情け無用な幾多の敵をヒロインに向かわせるだけ向かわせておいて、はじめてビルの底知れぬあくどさを実感させるエピソードであるだろう。

だから、ブライドが何度も絶望し、そして何度でも立ち上がっていくという前提が必要なのだ。ブライドにはパイ・メイと服部半蔵というふたりの師がいる。強大になってゆくあいだに、彼らのうちの誰かに教えを乞いにゆく、というエピソードがあってもいいのではないか。冗談半分に言えば、今回ビルは「おまえの娘は生きている」と告げてブライドの動揺を誘い、彼女にダメージを与えて去ってゆく、などという某SF大作のような展開を持ってくるのも一案だと思う。(さすがにそれが長引いて、『キル・ビルはつらいよ 花も嵐もザ・ブライド』なんてのが出てきてしまうと困りはするが:笑)不甲斐ない敵は一作ひとりで沢山である。あくまでここまで話が続いてきたのなら、ビルという首領の大きさを盛り立てて欲しかった。

それゆえに、二作目という中途半端な終わり方で、どっちつかずにエンドマークを出してしまったこの野心作を惜しむのである。

(評価:★3)

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