[コメント] みなさん、さようなら(2003/カナダ=仏)
堕落した無神論者は言う。「死ぬ事に意義が見出せない」「何とか見つけなければ」・・
私は天神様で合格祈願し、教会で結婚式を挙げた「一般的」な日本人である。社会主義者ではないが、そういった意味では無神論者である。かつ、スケベさも抜きん出ている親爺である。
だから彼に親近感を抱く。
この映画では真理を追究してきた社会主義者も、資本主義の象徴のような息子の金の力で踊らされていく過程がコミカルに描かれる。その姿は偽りの幸福なのかも知れないが、死にいく者にとってはかけがえの無い贈り物に違いない。
まるで雑踏のような病院、地下で埃を被ったキリスト像、歴史家のアジとして語られる神無き不毛の歴史。そして唯一信ぜられるべきモノとしての「金」。ここで語られる神不在の空間に我々日本人は違和感なく溶け込める。
そして「友人」。
日本人にとっては非常に理解し易いキーワードでストーリーが展開していく。監督はあくまで「神」を前面には打ち出して来ない。私は個人的に「神様」を上段に振りかざした宗教映画が苦手である。私的にはこんなストーリー展開は「いい!」。ますます親近感を覚えてくる。
と思った辺りで、ナースが男にぽつりと言った。「人類がそれほど酷い事をしてきたというなら、やはりソレを許す神が必要ね。」
何だかガツンとやられた。やっぱり「西洋人」は言う事が違うと思った。「根っこ」からして日本人とは違うんだと改めて感じた。
何だか、神を否定しているようでいて、その実、元妻はすべてを許し、元愛人たちは懺悔を共有しあう。神の教えに最も反する安楽死でさえも、それは女の人間としての復活の為の試練と位置づけてしまう。
うわぁ、何とも壮大なというか、小細工の効いた「宗教映画」をそれと知らずに見せられた気がする。まっ、それでも素晴らしい作品に仕上がっているので、損したとは思いませんが、何だか「してやられた」という悔しさはふつふつと・・・
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