[コメント] 怒りの葡萄(1940/米)
映画を見終った人むけのレビューです。
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かの有名なスタインベックの原作が世に出たのはこの作品の前年であったらしく、つまり本作は原作の衝撃そのままが同時代的に示された作品であるらしいのだが、そういった価値をも上回る映画的価値が示されている作品として、本作は映画史上に輝く名作として語り継がれなければならない映画である。
特に素晴らしいのがロード・ムービーとしての側面であることは多くの方がもうすでに述べられているところだから、あえてその点についての追記はせずにおくが、ただひとつ記させてもらえるとすれば、その行程における2つの死(言うまでもなく、主人公の祖父母の死のことである)のどん底ともいえる悲しさが(ジョード一家は、その愛すべき家族のお葬式すらあげる金銭をも持ち得ず、やむをえずその遺体を、その場所さえわからぬ道端に埋葬するのである)、最後は、こんな苦しみ悲しみをも乗り越えようとするこの一家なら、いつか必ず光明を見ることができるだろうという、闇の中に光る一筋の光へと繋がっていく伏線としての機能をも有しているところである。その柱が主人公トム・ジョード(ヘンリー・フォンダ)のどんな暗闇の中でも光り続ける瞳の強さであることは言うまでもないのだが、そんな彼の瞳の強さを育んだであろう母(ジェーン・ダーウェル)の存在感も全篇を通して圧倒的であり、そんな2人で占められるクライマックスの対話は、まさに不思議ともいえる高揚感があって感動などという言葉では言い表せないほどの充足感があった。これがジョン・フォード監督の意志により、いわゆる一発録りであったなどという事実も、まさに伝説として語り継がれてよいものであろうと思う。
また、特にウィリアム・ワイラーとのコンビで名を成した撮影のグレッグ・トーランドが、製作者のダリル・F・ザナックが大枚をはたいて引き抜いてきただけはある抜群の仕事ぶりを示しているところも忘れてはならない見所のひとつなのだが、よく考えるとこれももう多くの方々が語られていることであった。蛇足失礼。
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