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[コメント] 人間魚雷回天(1955/日)

松林宗恵監督が海軍第三期予備学生だった事を知り、彼等の死生観そして「死」の事実がリアルな経験として演出されている。この事実を前にしては何も言えなくなる。そして『鉄腕アトム』/『仮面ライダー』/『宇宙戦艦ヤマト
sawa:38

作中で岡田英次扮する少尉が年長の従兵加藤嘉と語り明かす中でこんな台詞があった。

「この無意味な死が、無謀な戦争をしているんだと国民に気づかせるきっかけになればそれで良い」(意訳)

日本の歴史を語る上でこの戦争での死者が何万人だったとかの漠然とした「数字」には実感が伴わない。「数字」は単なる「記号」に成り下がり、教科書でも文献でも新聞でもTVでも感慨も哀しみもない「量」として記録されている。しかし、この「量」を示す「記号」はそのひとつひとつが「人間の死」の積み重ねであったことを実感しなければいけないのだろう。

「英霊」という言葉に生理的拒否反応を示す方も多いと思う。しかし、無念を抱え死んでいった方々、その中でも好むと好まざるに関わらず自らの意思を持って死んでいった方々には「英霊」なんて言葉をもって手を合わせるぐらいしか僕等には出来ない。

また終戦記念日が近づいてきた。いろいろな問題がある社会かもしれないが、絶対的な平和が継続していることだけは事実だ。歴史というスパンで考えた時、彼等の無謀な死がその後の日本人のアイデンティティを変えさせたといっても言い過ぎではないだろう。

鉄腕アトム』しかり『仮面ライダー』しかり『宇宙戦艦ヤマト』しかりである。戦後の代表的なヒーローたちは最後は自らの命を犠牲にして「特攻」していった。海外のメディアはそんなヒーローが理解出来ないと言うが、「特攻」が美化されていった反面でそれは必ず次代へのメッセージとして「非戦」があった。

日本特有の情感なのかもしれない。でも次代へのメッセージとして「非戦」が存在していることに安堵する。無抵抗の住民を無差別に巻き込むイスラムの自爆テロとの違いがそこに見出せるから・・・

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)づん[*] 地平線のドーリア

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