[コメント] マルタの鷹(1941/米)
映画を見終った人むけのレビューです。
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ダシール=ハメットの傑作ハードボイルド小説の映画化で、傑作と言われる原作をさえしのいだ作品とまで言われ、以降興隆していくフィルム・ノワールの礎を築いた作品でもある。
本作はそれまで脚本家として知られていたヒューストンの監督デビュー作であり(勿論脚本も自らが手がけている)、以降盟友となり数々の傑作を生み出したボガートとの出会いの作品でもあり。ヒューストンの脚本家としての非凡さを示す事として、本作では原作の台詞を全く変えずに入れてしまい、しかも監督としてもカメラ・アングル割と平板な物語の原作をしっかりエンターテインメントに仕上げてしまった。特にこのオープニングは映画ファンには必見映像。
内容そのものは良くも悪くも“ハードボイルド映画”。主人公は基本的に受け身で、次々やってくる危機を乗り越えている内にいつの間にか事件が進展していく。と言った感じの作品なので、ストーリーの起伏が今ひとつ足りない感じ。主人公の役割として「事件に関わってしまったこと」が最高の存在意義となってしまっていて、タフ・ガイではあっても、決して“名探偵”などとは言えない。映画好きでもストーリー重視派には今ひとつ受けが良くない。
一方、雰囲気作りに関しては確かに名人芸。やや傾斜したカメラ・アングルとモノクロ映像が雰囲気作りには最高にはまってる。この雰囲気を楽しめるかどうかがハードボイルド映画を楽しめるかどうかの試金石となるだろう。本作が楽しめるのならば『三つ数えろ』も『チャイナタウン』と言った作品も楽しめるだろう。
しかし本作の一番の見所はなんと言ってもボギーの存在感に他ならない。寡黙で渋くてずぼらでありながら、事が起こると無駄のない動きを見せ、どんな危機に陥ってもどこかに余裕を感じさせられる。こんな役が出来る役者は本当に数少ないが、その最高峰がボギーであろう。
本作によって、本当に「格好いい男」とされるようになったボギー。美意識というのは色々なところで変動するものだな(念のため。映画俳優の中で私が最も格好良いと思ってるのはボギーです)。
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