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[コメント] ル・ディヴォース パリに恋して(2003/米=仏)

看板に偽りあり!軽快なロマコメを期待して観るととんでもない。でも、これは映画好きにはたまらないご馳走でしょう。ユーロでのオークションのシーンで英ポンドで話をする担当者と米ドル(+日本円!)換算表示!
ぐるぐる

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現代版『巴里のアメリカ人』フレンチ・ヌーベルバーグのなれの果て風味!? もちろん、しっかりレスリー・キャロンですよ! クーッ、泣けます。 しかも、クライマックスはオキマリのエッフェル塔ですよ! タマリマセン。 ケリー・バッグでルネッサンス古楽のコンサートに出かけるゴールディー・ホーンの娘! サイコーです。

などなど、個人的にグッとくるポイントが多々あるのを合わせて★ひとつオマケで大甘の5つ★、というところ。たしかに軽快なテンポでスジを追っていくタイプの映画を期待していると(゚Д゚)ハァ?となるのも無理はないし、実際にIMDbでも賛否両論みたいだったけど。

しかも、日本ではそれに加えて何だか内容とかけ離れた売り方で損をしているようなところもあって、ちょっと気の毒な映画かも。だって、あのDVDのジャケットは何よ? てっきり軽いロマコメのつもりで観始めて、最初のうちはちょっととまどいましたが。まあ、ティエリー・レルミットを「セクシー」とするセンスはハリウッドには無いっしょw

ジェームズ・アイヴォリーという人は、よく抑制された演出で、ディテールまで気を配って丁寧に仕上げる(正確なフランス流の描写とかエッフェル塔での団体客のリアルさを見よ!)ものの、どうにもイキオイに欠けてしまって→結果→ビミョーな作品が多い、という印象だったけれど、今回は題材(と二人のブロンド美女)に救われたのか、いつものような「丁寧なあまりの停滞感」に陥らずにバランスを保っているような気がした。

思うに、この監督は長くヨーロッパで仕事をしていて外から米国を見る批判的な目線が常にあるため(逆にそういう感覚なので外国で仕事をしていたのかもしれないけど)、そこから一種の自戒として常に意識的な抑制を志向し、それが特有の重さ暗さにつながっていたのかもしれない。

この映画の「下絵」には、米仏間の、単なる文化的相違という以上の、パリ開放以来この60年間の文化的愛憎劇の集大成を見るような大きな構えがあって、しかし、それをストレートに押して来るのではなしに、そこここにクスっと笑える小ネタを満載して、米仏(たまに+英)の「ビミョー」な関係をあぶりだしていく。ポンドで話をする担当者とユーロでのオークションのシーンでの米ドル(+日本円!)換算表示!

まあ、カメラも良いし、よく考えられていてしっかりした描写ではあるものの、必ずしも良いテンポとか洒落た演出というワケではないから、その意味では今回も「ビミョー」な出来なのかもしれないけど、その「ビミョー」さが、今回の題材にはぴったり合っているんじゃなかろか? いや、実に楽しい映画でした。

(評価:★5)

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