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[コメント] 家族ゲーム(1983/日)

まさにパゾリーニの『テオレマ』そのままの世界。全編不穏な緊張感に包まれているが、突然繰り出されるブラックユーモアがたまらなくおかしい。以下、ラストシーンに関する考察。
地球発

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







ヘリコプターの爆音がマンションの部屋中に響くラストシーンについて、様々な説を元にどんな解釈ができるか考えてみた。

1母親(由紀さおり)による息子殺害説  この家族、全員ちょっとおかしいが、その中でも母親は唯一まともそうに見える。一方で、切れたら一番大変なことをしでかしそうな雰囲気を醸し出していたのも事実。ラストシーンでは、母親は既に息子達を殺害しており、ヘリコプターは立てこもっている母親を報道するためのもの。母親は既に発狂しており、ヘリコプターに対しても「何かあったのかしら」と首をかしげる。

2息子達による父親殺害説(僕はこれを押したい)  父親は、しきりに当時話題だった金属バット殺人の話を持ち出していた。また、後半は明らかに兄に対する父親の態度が冷たくなっており、兄の生活も引き篭り気味になっていた。ラストシーンにはなぜか父親は登場しない。息子達が昼間なのに部屋にいるので、休日のはずだが。恐らく父親は兄によって殺された。そして弟も。ヘリコプター音は1説と同じく報道。眠っている兄の洋服に汚れがついているように見えるのは返り血か。母親はなぜ殺されなかったのか。オードリーヘップバーンの映画のレコードを手に、妙に親しげに話す兄と母親に、一種の近親相姦的な雰囲気を感じたのは僕だけだろうか。

3戸川純の義理の父死亡説(結構多くの人がこの説を主張)  戸川純が、由紀さおりに対して「義理の父親が死にそうなんです、死んだら棺桶はどうやってマンションに入れればいいんでしょう」と泣き崩れる印象的なシーンがある。恐らく、ラストシーンは、戸川純の義理の父親の棺桶を入れるために、ヘリコプターで吊るしているのではないか。

4戦争の象徴説(どうも本当はこれっぽいかな)  「当時は地獄の黙示録にはまっていた」森田監督談。つまり、「家族はゲームではなく戦争である」と表現するために、地獄の黙示録でも印象的なヘリコプター音を挿入したのではないか。

いずれにしても、ここまで深読みできるラストも珍しい。恐ろしく深い意味が込められてそうで、意外と適当に撮っただけっぽい気もするのが森田監督らしい。

(評価:★4)

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