[コメント] アンソニーのハッピー・モーテル(1996/米)
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「働いたこともないのに、疲れ切るの?」とあきれる妹がかわいい。しかし、印象深い登場のわりに、中盤に思い出したように挿入される妹に宛てた手紙を別とすれば、出番はこの一度きり。書店襲撃(「どうして鼻にテープを?」「なんで小分けなんだ?」)といった個々のエピソードの安定したおもしろさに比べて、全体の物語がいまどこに向かいつつあるのか、あと一歩乗り切れないまま映画が展開していくような印象を覚えたが、IMDbを見ると、同キャストによる同タイトルの短編が先に作られており、これを拡張したのが本作にあたるらしい。長編としての構成の若干の難はそのせいだろうか。
主人公たち三人の打ち合わせの最中に、テーブルの上に置かれていた拳銃をめぐって起こる子どもじみたケンカが笑える。考えてみると、打ち合わせに全く必要のない拳銃をわざわざテーブルの目立つところに置いていたのは、おそらくオーウェン・ウィルソンのキャラクターと推測されるわけで、そう思うとますますおかしい。拳銃が、いまにも暴発でもしそうでいて同時にこれほどマヌケに見える映画というのも珍しい。
あるいは、やっとの思いで電話が恋人のもとへとたどりついたルーク・ウィルソンが受話器を口元から離して「声で俺だと分かったぞ!」と口走り、画面の横からそれを聞いたネッド・ダウドが顔を出すところなど、やはり嬉しくなる場面。
L・M・キット・カーソンが共同プロデューサー(co-producer)としてクレジットされていて、驚いた。IMDbを調べてみると、元になった短編のほうでは単独で製作総指揮を務めていたようだ。『悪魔のいけにえ2』と『パリ、テキサス』の脚本家(後者はCinema Scapeのスタッフ欄には未記載)で、黒沢清監督がサンダンス・インスティテュート・スカラシップでの渡米時に思いがけず遭遇して親しくなったのを著書のどこかで熱っぽく語っていた人物である。意外な人物がウェス・アンダーソンを世に送り出している。
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