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[コメント] ガメラ 大怪獣空中決戦(1995/日)

平成ゴジラシリーズで燻り続けた昭和の怨念がここでやっと晴らされた。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 大映が往年のガメラシリーズを復活させる!。そのニュースを聞いたとき、悪いが全然期待してなかった。既に復活して大分経つ平成ゴジラシリーズがあまりにも駄作揃いだったため、正直特撮に飽きが来ていたのだ。特撮は古い作品に限る。そんな風にも思っていた。確かに金子修介と言う監督には興味があったものの、劇場に足を運ぶまでもない。そう思っていた。

 しかし、そう考えるのは、あまりに早計だった。まさかここまで質の高い作品を投入してくれるとは。正直、ビデオでこれを観て、劇場に行かなかった自分の不明を悔やんだものだ。

 特撮好きな人が、長年暖めてきた企画を可能な限り忠実に映像化した作品。これが正直な感想。往年の昭和ゴジラシリーズやガメラシリーズを観ていた人なら、「私だったら、ここはこうする」とか、「こうすればもっと面白くなるのに」と言う思いを鑑賞の度に思っただろうが、まさしく、それがしっかりと映像化されているのだ。これには驚かされた。正直、私が思っていた「ここはこうして欲しい」と言う所を、実にツボを抑えて製作してくれた。それだけで充分と言う感じ。

 予算の関係で、少々安っぽくなったことと、売りのためどうしても使わねばならなかった藤谷文子の(スティーヴン=セガールの娘だったりする)の素人臭い演技お陰で大分興が薄れた部分もあるが、いかに怪獣を格好良く撮るか、そして従来の着ぐるみだけでなく、SFXをいかに映えるように使うか。そしてどういう風にストーリーを持っていけば、怪獣が格好良くなるか。色々な点で実に顧慮されており、これが又、本当にツボにはまってる。

 怪獣は哀しい存在であって欲しい。それが私なりのポリシーだったのだが、怪獣映画が派手になればなるほど、その要素がどんどん減っていった。特に平成シリーズになり、巨大さを失ったゴジラは単なる暴れん坊でしかなかったし、ゲスト怪獣は単なる人間の手先か、ゴジラを上回る極悪な存在か。それだけになってしまい(唯一『ゴジラVSビオランテ』のみ、その点を顧慮していたが)、正直これではどうしようもないと思っていた時期だけに、ガメラが人を助け、その人間に誤解を受けて攻撃される姿を見せつけられて、思った。そう。まさにこれこそが私の見たかった怪獣の姿じゃないか。そして地上で肉弾戦を行い、空を飛んで必殺の火の玉を吐くあの雄志。それをきちっと撮り切ったカメラ・ワークと脚本。背筋がゾクゾクするほどだった。

 ところで、先に「予算の関係」と書いたが、大映としてもこれがこんなにヒットするとは思ってなかったらしく、大映が提示した予算は驚くほど少なかったらしい。結局屋内施設がレンタルの関係で使えず、外にセットを組んで、自然光の元、カメラを回したのが意外な効果を見せ、実にリアルに仕上がったのが面白い。これは特技監督の樋口真嗣に負うところが大きい(ちなみに『エヴァンゲリオン』の主人公は彼の名前を取ったもの。現に彼はこの撮影中にも『エヴァンゲリオン』の脚本及び撮影に携わっている)。彼は元々素人で特撮映画を作っていたこともあり、その辺のノウハウはしっかりしていたし、その後アニメ界に入ってからは構図の勉強をしっかりしたらしく、見事なまでに「格好良さ」の演出を打ち出していた。そして伊藤和典の脚本。彼が押井守と組まずにこれだけ見事な脚本を書けるとは、正直思ってもみなかった。これで彼のことを、大分見直す事となった。

 これが怪獣映画としては一つの完成型と思ってしまう程だったのだが、私はまだ甘かった。まさかこの続編が…→『ガメラ2』へ。

(評価:★4)

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