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[コメント] ガメラ2 レギオン襲来(1996/日)

これに★5を付けるのは、私にとって初代『ゴジラ』に対する裏切り行為じゃないかとも思えてしまうのだが…やっぱり付けないとなあ。ごめんよお。ゴジラ。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 『ガメラ 大怪獣空中決戦』の好評を受けて登場したシリーズ第2弾。リアリティは1作目以上で、SF的な細かい設定に裏打ちされた、共生生物のレギオンと草体の関係や、リアルな攻防戦、そして1作目を凌ぐマニアックなカメラ・アングル、ガメラの必殺技の存在などに目が行く。ただ、ここで本当に重要なのは、自衛隊の存在だろう。

 怪獣映画に出てくる人間側の兵器もそれなりに変遷している。ゴジラシリーズだと、初代ゴジラは別物として、以降のシリーズだと人間側は通常兵器をベースとしたものを用いていた。ただ、その存在は怪獣の強さを印象づけるための単なるやられ役、若しくはゴジラ登場までの場つなぎに過ぎない。これが平成ゴジラになると、人間側も超兵器を繰り出すようになるが、基本的に正面対正面の戦いとなる。これが全く面白くなかったのは周知の通り。これは要するに怪獣対怪獣に焦点を当てすぎ、人間の兵器は絶対に怪獣に敵わないと言うのがゴジラシリーズでは不文律となっていたから。だから、人間側がどんな超兵器を投入しようと、「どうせやられる」と思ってしか観ることが出来ないし、作る側もその辺割り切っていたようだ。

 これがガメラシリーズになるとやや様相が変化する。昭和ガメラの時であっても、ガメラ自身、人間によるZ計画で宇宙の彼方に飛ばされたのだし、以降の『ガメラ対バルゴン』、『ガメラ対ギャオス』と、確かに人間側の兵器は最終的には通用しなかったとは言え、丁寧に人間と怪獣の攻防が描かれていたのが特徴的だった。しかも基本的には現用兵器、若しくは別目的のために作られたものを兵器に転用し、リアリティを増していた。そこには紛れもなく、人間側による工夫の跡が見られた。

 それで平成になって復活したガメラは、そう言う点においてもやはり『ガメラ』だった。1作目はどうも目立たなかった人間側の努力が、2作目の本作ではむしろガメラ自身よりも前面に出るほどに強調されている。

 登場するのが自衛隊というのは、現代の日本の状況を考えれば当たり前と言えば当たり前であるが、これは本当に重要なこと。もし怪獣対策本部と言うものが作られなかったとするなら、当然登場するのは自衛隊をおいて他はない。しかもこういう場合において、自衛隊がなすべき役割は何よりも人的被害の軽減となる。“人的被害”の中には当然自衛隊員も含まれるため、特攻をかけたりするのは許されない。ましてや他人の生命を脅かす重火器の仕様は極力避けられる。…こう書くとあんまり派手なドラマにならないように思えるが、それが違う。人間を人間たらしめている大きな要因、つまり人間には考える力が備わっていると言うこと。

 そう。レギオンと草体が現れたとき、その正体を探るべく、必死になって調査する姿、レギオンの弱点を探し出そうと努力する姿、それらは確かに派手ではないかも知れないが、この点に焦点が当てられると、充分に息詰まる展開が得られる。それで現用兵器を用いて、効果的に敵にダメージを与えると言う展開に持っていける。正面から堂々と戦うより、むしろそう言う側面から、どう勝つかの研究がなされて然りなんだ。人間側の主人公達が上手くその辺をフォローしてくれていたので、自衛隊の存在感が強調され、怪獣映画における“弱いはずの自衛隊”を上手く用いる事ができていた。

 他にも、人間の視点から見た戦車の雄志と言うのもあるだろう。怪獣の目から見た、見下げる形の戦車ではなく、人間の目で横向きに見ているからこそ、戦車に重量感が与えられ、そしてレギオンとガメラの巨大さが強調される。その辺の撮り方が実に上手い。個体としてのレギオンを小さくしたのも上手かった(『ゴジラ対デストロイア』では、その部分をとてつもなく下手に撮ってしまっていたのが良い反面教師になってたんじゃないかな?)。

 とにかく自衛隊の撮り方が上手いのがこの映画の特徴とも言える。金子修介監督がその点にこだわった事を示すのに、面白いエピソードがある。日本の映画監督で戦車の格好良い撮り方を追求する監督として押井守の名前が挙げられるが(この人の戦車好きは筋金入り)、金子監督は実は押井監督と大学が同じで、同じ映像研究部に入っていた。それで本作を撮る際、押井守に自衛隊パートの特技監督を打診したそうだ。丁度押井監督は『攻殻機動隊』の撮影に入っていたので、一蹴されたそうだが、これが実現していたら、面白かっただろうな。

 ストーリー展開で言えば、特に後半はややアニメっぽくなってしまったのが残念とは言え(一応最後まで出し渋った必殺技は『ガメラ3』で明らかにされるけど)、その分、ツボを抑えた演出がなされ、丁寧に作られているので、好感が持てる。

 一作目を劇場で見逃し、残念な思いをしていただけに、これを大画面で観ることが出来たのは嬉しかった。

(評価:★5)

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