[コメント] 自由な女神たち(1987/日)
嘘つきの映画。腐った畳という装置の映画。露光オーバーぎみの紗がかかったような画面の多用はイラつくし、少々やり過ぎの奇矯さが受容できない映画ファンもいるだろうとは思うが、当時の松坂慶子と桃井かおりのバイタリティーと可愛らしさが圧倒的で、補って余りあると私は思う。特に、桃井の科白は、ほとんどアドリブだったのではないか、と思えるぐらい自然、というか桃井らしい。これには感動した。対して、松坂は、ちょっとおバカだが、純真無垢な、男にとって都合の良い可愛い女のステレオタイプを実に上手く演じていると思う。二人の歌唱シーンの愉しさといったら!
あと、最初、松坂のアパートの部屋にブルック・シールズのブロマイドが貼ってあるのが、かなり目を引いたのだが(旭日旗も違和感あったが)、ブルック・シールズについては、ちゃんと整形シーンや後の科白でも言及される、というところもしっかりしている。また、片桐はいりから松坂への変化を見せる特殊効果の処理もとても上手くいっているのだ。
場面が草津へ移ってから登場する人物たちも皆キャラ立ちも良く、周到に演出されているではないか。中でも、私は加藤治子のファンだが、この人のぶっ飛びようが最高だと思う。しかし彼女が、神社の鈴緒(鈴を鳴らす綱)に跨った絵面を面白がれるかどうかは、人を選ぶところかも知れません。あと、イッセー尾形もやっぱり面白いなぁと思いながら見たが、この人は、もうちょっと筋に絡んでも良かったと思う。こゝは物足りない。
もう一つ難点をあげると、被害者同盟の人たちの描き方か。リーダー格の横山道代が彼女だと分からないぐらい顔を隠蔽されているのも気に入らないが、この人たちだけのショットまでが、松坂と桃井の場面と同じような、紗のかかった画面なのだ。こういう特別なショットは、ヒロインのためにあると思う、というかそれが映画の演出だと私は思うのだ。
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