[コメント] 華氏911(2004/米)
「バカに見えるからバカ」って言うのは余りにも危険。なに?よくモノの名前忘れとか言い間違いが多い?それでバカって決め付けるのはどうかな。でも、のんびりヤギさんの歌を聴いてる所なんか本当にバカに見えるよな。オレ笑っちゃったよ。あそこの編集は上手。じゃなくてさ、そーゆー話じゃなくて、ムーアがデブに見えるからデブって言われるのとはワケが違うって事さ。ブッシュの真髄は「バカ殿に見せて油断させた所で爆撃GO!相手がビビッタら圧力GO!」だ。怖いヨー、これは。人権がー!と訴えてる国のトップがこれだもの。テロ支援国の人間には人権なんか無い!って言ってるに等しいよね。人によっては、それこそがバカの真髄みたいなポイントだろうけど。でも「理不尽な国」に対して一番効く方法が「理不尽な戦略」なのさ。結果でいえば、国自体が利益につながるという(ついでに(←あくまでついで)自分も儲かる)。ある意味、純粋なアメリカの為の大統領だよね。国民の半分が支持するわけだよ(他国では激悪)。まあ、優秀な大統領かって事でもないけど。
ところで、映画自体は前作に比べてさえも(実際、前作も面白いとは思わなかったので)更に面白みを欠いた。ドキュメンタリー独特の作り手の独自の解釈で真実を暴いてゆく興奮が伝わってこない。そりゃそうか。ある意味、作り物だもんな。これははっきりいって、アイコラのそれと同じだ。しかも、その見せ方が、自分のツボに一番びっと来る「こんな何気なく立ってるバックショットに眼鏡姿のブッシュ!」みたいなフェチなシチュエーションな作り物じゃなくて、見る側のニーズに合わせて「こんな巨乳ポーズに開脚でブッシュ!」ぐらいプレイボーイ風味な気が抜けたもの。『ボウリング〜』であったしょうもない演出(ヘストン邸の門前に写真おく所とか)が全編だと言ってもいい。反ブッシュ票をかき集める為になりふり構わず資料をかき集めたモンタージュ映画なわけだが、その集約させたポイントが「金の亡者」であり「若者の死」でありってのは余りに寂しいラインナップだ。そんなの過去の大統領全部に言える事だし、今後の大統領全部にも言えることだ(たぶん)。つまりは、ムーアが本当に訴えたいポイントはブッシュだけにあるわけじゃないんだろう、きっと。世の中のエリート(勝ち組み)が許せないだけなんだな。もしかして資本主義社会が肌に合わないだけなんじゃないか(笑)。そんなポイントに真剣に「えー!ブッシュってそんなヤツだったの?しんじらんなーい」と言うのは純朴な中部の田舎もんだけだ>それが狙いだったカッ!つまり正解?まあ「選挙にさえ勝てば何でもいい」と、つまり4年前に1回社会を戻そうぜってのが主張なんだろうけどさ。今回もフロリダで数票差の勝負になったら笑うんだけどね。がんばれフロリダ州民。
しかし、ムーアの「4年前」に戻す構想だとどうなんだろう。まあ、ゴアとケリーじゃどうなんだって所はおいといて、共和党が政権とろうが民主党がとろうが、ムーアから見たら一緒だと思うんだけど。要は、「素人はすっこんでろ!」言われるのが我慢できないってだけでしょ?世の中、政治屋だけで国を仕切っていると、たまにこうゆう「何?何?何やってるの?素人のオレにも判るように説明してよ。ナンダヨ。それってずるいじゃん。ずるいよずるいよ。おかしいよ。おかしいよ。何で?何で?」という何で何で君が登場する。たまーに、そうゆう正論をたてに民衆を煽動する人が革命の祖になったりするのだが、このマイケル・ムーアも充分にその素質ありと言っていいだろう。なんったって、カレの支持基盤が「政治なんざよく知らないけど、ヤツなら何か変えてくれるんじゃないか?」という民衆の気持ちだ。民衆を煽動する大きな秘密がそこにある。「真意が見えなくても彼が言うのなら」というカリスマ性さえあれば後は何にも要らない。エリートにディベートで負けそうになっても民衆はきっと応援してくれる。「負けるな、エリートに!」って。というか、ムーアを信じるって人はみんな、ブッシュの見た目のバカっぽさに「あいつバカじゃん?」と言ってない?同時にマイケル・ムーアを見て「だってあいつデブじゃん?悪い人じゃないべ」ぐらいに思ってるだろ。見た目で騙されるな。それがヤツの作戦だ(本当か?)。
本人は政治執行に興味なさそうな感じ(風貌)だが、いっそ、アメリカ大統領を目指すってのもいいんじゃないか?次回作は『米大統領選挙の摩訶不思議』とかさ。一気に立候補ですよ。しかも支持政党も無く。「何で?立候補しちゃいけないのかい?」みたいな。一般市民は何でもいいから上に立っている人に文句いえりゃいいんですよ。それを体言してくれるムーアってヤツですな。基本的に面白がってあっちの党こっちの党って投票している節のある浮遊票は乗って来ると思うけどな。まかり間違って当選なんかしたら世界は混乱するだろうが(最も混乱するのはアメリカを敵国としていた各国だろうが)、初めてフランス大統領が扱いに困るアメリカ大統領が誕生するかもしれないぞ。これは貴重だ。困惑したシラクの顔もたまには見てみたいもんだ。初めての就任演説のシーンでポテチ片手にカメラ持って登場とかさ。バカ受け間違いなし。面白そうだからやって欲しいな。さらに、ムーア政権誕生のあかつきにはこんなメリットもある。日本政府がアメリカ政府との癒着から離れるいいきっかけになる。実務レベルで困るのはムーア就任期間の4年間(へたすれば8年間)だけだ。日本の成長の為にもいいかもしれない。頼れないアメリカ。頼らざるをえない日本政府。暴走する中東。何とかしようとするどっかの国。目覚める世界!みたいな。それも世界の為にはアリだと思うんだけどね(アメリカにメリットは無いからまず実現しないが)。
正直、自分がイマイチ、ムーアに対して信じれないのは、過去の歴史上において、政治素人でなお且つ「社会の為に」と煽動する人間の大半が狙ってやる人間なだけに「その真剣な姿」に純粋に惚れたりすると、ナチスドイツに発展したり文化大革命に発展しちゃったりするのが嫌だってだけだ。だいたいにおいて本人にそんなつもりがなくとも、煽動された暴徒は煽った本人の手に負えなくなって暴走する。たいていの人が自分の発言が大きな影響力を持つとなった時に慎重な発言に終止してしまって、若かった頃の歯切れの良さが出なくなるのは、そんな防衛本能に近い。いま、こうしてオレが好き勝手にいえるのもオレが微力だからに過ぎないのだ。が、たまにムーアのように発言に力がついても好き勝手言うのが現れる。本人の意思がどうであれ、正直、これは善にも悪にも作用するので社会的にいえば危険なだけだ。やみくもに他人の言葉を信ずるってのは重い責任が伴うわけだよ。「ブッシュは信じれないがムーアは信じれる」そんな思いの人は今一度、ムーアという人が何をしたい人なのか考えてみるべきだ。
ちなみに、オレが結論づけたムーアがやりたい事は「権力と戦っていたいだけ」なんだと思う。なぜ、権力と戦うか。それは、相手が強大だからであり、倒せるものじゃないと思ってるからじゃないかなぁ。いざ、倒してしまった時に本当の迷走が始まるというか。まあ、そうならない事を祈る。「世界が破滅しない程度の混乱」こそが後の安定を産む。雨ふって地固めたつもりがドロヌマ。現在のイラクはこうなっているが、のちのち評価される事だと思いたいけどね。
最後に、ブッシュにはこの映画を見てしっかりと笑って欲しい所ではあるが、まあ、誰しも自分の事をバカ呼ばわりしているものをじっと見るのも辛かろう。精神衛生上は見ないほうがいいか。なんで変わりにオレが見といてやったから。たいした事なかったから。誰かブッシュに伝えといて、お願い。あ、小泉くん。キミにお願い。伝えといて。ていうか、キミは見なさい。これぐらい。
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