各シーンの終わりで父親が部屋から出ていった後、黒く残る出口が印象に残った。あの黒みが不本意に命を奪われていった死者たちが眠るところであり、原爆投下以来「ヒロシマ」が背負った重みのように思えた。陽気でユーモラスで少し小うるさい父親もやがて静かにあの黒みの中に消えてゆき、そしてその黒みも静かに消え、元の現実の空間に戻っていく。ここで生み出される余韻が作品の質をぐっと高めているように感じた。