[コメント] タブウ(1931/米)
続いて、いくつも小さな滝のある川で、水遊びをする女たち。男たちが、入って行く。胸をさらけだしている女性もいる。中にヒロインのレリ。マタヒのところへ花冠が流れてくる。花冠は、全編に亘ってヒロインの象徴的小道具だ。 西洋式の帆船がやって来、村総出で迎えに行く場面。沢山の小舟、カヌーの縦構図カットが壮観だ。やって来た船の名前は「Moana Papeete」。帆船には、西洋人と、老いた南海の戦士(ただのジジイに見えるが)がいる。書簡を読む老戦士。以降、字幕は登場人物が扱う書簡やメモ書きの文面のみで処理されるという趣向だ。なぜかよく分からないが、ヒロインのレリを老戦士に捧げることになる。これを破るのはタブウだと書簡に書かれている。タブウをおかすと死だと。レりを老人に捧げるための、お祝いの祭りのシーンが見事だ。若者たちのダンスの儀式は、フラハティの『モアナ』に似ている。悲嘆にくれていたマタヒが、気を取り直して踊る場面では、レリも笑顔になる。
二部は、真珠の採れる島が舞台。マタヒはレリを奪って逃げ、二人で暮らしているのだ。いつしか、マタヒは島一番の真珠の採り手になっている。海岸の桟橋の固定ショットに、船がフレームインするカットが繋がれて驚いていると、船の名は「Moana Papeete」。この後、マタヒとレリが暮らす小屋に、老戦士が何度か出現するシーンがあるのだが、レリには見えるが、マタヒは死角になっていて気づかない、という演出がなされる。ドアや窓の向こうに老人が立っているカットは、かなりショッキングだ。
二部では、もうひとつのタブウ、鮫の出る禁漁区が描かれる。海の中に「TABU」という看板が立てられている。密漁者は、ロープを持って海に潜るが、急に引っ張られ、舟に残った相棒がロープを手繰り寄せると、ロープの先が噛み切られたように、ほつれている。つまり、鮫に食われた、ということだ。フラハティのような、綱引き合戦の演出があるかと思ったが、ムルナウはしない。終盤、マタヒは、レリと逃げる金を作るため、こっそりと危険な「TABU」の海域で真珠を採る。海中での鮫との対決。鮫のカットもあるが、鮫に見えないのがご愛敬。しかし、同時刻、レリは腹を括って老人の元へ向かっているのだ。浜辺に小さな帆船と老人。それを知ったマタヒが老人の帆船を追う。驚異的な運動能力で、カヌーと泳ぎで近づいていく。老人の船の側まで来て、舷側のロープをつかむ。さて、どうなるか、というエンディングの記述は避けるけれど、収束の見せ場も、やはり、ロープなのだ。そして、ラストのラストも、いやあ大したもんです。
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