[コメント] 戦争のはらわた(1977/独=英)
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下痢してヤツレた顔でハイルするターナーにスローモーションの爆撃がカットバックされる最初の戦闘が私的ベストで、ヴィスコンティのような退廃が蔓延している。どんな壁もぶち破り突進するT34が箆棒で、この戦車に爆弾かまして爆発させるのは、大日本帝国陸軍より彼等のほうが上手である(映画での比較)。勲章に推薦者が二名必要なんて官僚主義はいずこも同じと感心してしまった。ホモセクシャルのニュアンスのある会話もあった。
本作の白眉は中盤のブニュエルのような幻想。自殺して入水して、自分の手落ちで死なせてしまったソ連兵捕虜の少年が再登場して救われて、看護婦が出てきていなくなり、テラスでくつろぐが患者たちは毎カット出たり消えたりを繰り返し、ダンスした兵隊は顔中縫っているし上官に握手する兵隊は手首から先がない。結局リアルに入院していたのだと判るのだが全部幻覚とも取れるのであり(long live Germanyと看護婦は叫ぶ)、復帰後の後篇もだから幻覚かも知れない。
終盤はややダレるが、女性兵に突撃して尺八させて逸物噛み切られる件は素晴らしかった。上官を冷笑するラストは突然に純文学でとてもいい。「蝶々」の元歌は「幼いハンス」なる子供の旅と帰還の歌と勉強できた。
ナチスに便利にこき使われた哀れなドイツ軍という視点は『大脱走』などと同じ。コバーンに「将校は全員大嫌いだ」と云わせているが、これは米軍のなかでも云えたのか、独軍だから云えたことなのか、フィルムからは判別がつかない。思想的な強度は堂々帝国陸軍を否定する本邦戦争映画のほうが勝っていると思われた。
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