[コメント] マッハ!!!!!!!!(2003/タイ)
映画を見終った人むけのレビューです。
これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
“仏像の首を切り取って盗む”というと、あの円谷プロの黒歴史になってしまった映画『ウルトラ6兄弟vs怪獣軍団』をついつい思い出してしまう。本作の30年前に製作された日=タイ合作映画で、主人公は信心深い少年。そしてここでも仏像泥棒3人組が出てくるのだが、この3人組は仏像の頭を盗むだけでなく、追ってきた少年を射殺(しかも頭を打ち抜いて!)というヒドい話。それを見ていたウルトラの母は、少年に伝説の神ハヌマーンの命を与える。そしてハヌマーンの命を宿した少年はまず何をしたかというと、罰当たりな泥棒3人を成敗することだった。
しかもその成敗の仕方が凄い。一人は踏み潰し、二人目は倒木の下敷きにしたうえ、最後の三人目は叩き潰すという情け容赦の無い方法。「仏様を大切にしろ!大切にしない奴は死ぬべきなんだ!」という台詞まで出てくるのだから、タイではいかに仏教が敬われ、蔑ろにした時の非難が激しいかを物語っている。……何でこんなことを思い出したのかというと、敵組織のボスの死に方がそうだったから。罰当たりな人間は“潰されて死ぬ”、近代化が進んだとはいえ、信心深さや侮辱に対する罪の意識は30年前と変化はないようだ。
だがこの映画の弱いところもその“罰当たり”にあるような気がする。仏像を取り戻す、という理由で主人公ティンは悪と戦うが、最初のうちは同郷のジョージ達がやらかしたトラブルに巻き込まれるといった感があり、完全に乗り切らないうちに見せ場が始まったように見えるのも事実。あの『燃えよドラゴン』にしても、リーがあれほどカッコよく見えたのは磨かれた肉体や激しいアクションがあったからだけではなく、リーが本気で怒っているのが分かるからだ。悪の要塞に「任務として」乗り込むのと同時に、少林寺の名を汚し、最愛の妹を死に追いやるきっかけを作った張本人をこの手で討つ、という恨みがあるからこそだ。
この点は他の方も指摘していたが、本作には怒りを爆発させる要素が「仏様の首を取った」という点しかない。いやこれでも十分罰当たりなのだが、先に挙げたハヌマーンのこともあってか、どこか地域限定のようなものを感じてしょうがない。世界中の人間を燃えさせるには、悪い奴等がどれだけ悪いかというのをもっと描いてもいいと思うのだが、どうか。
……とまあいろいろ書いたが、アクションに関しては満足で、久々に「ホントにやってる感」漂うアクション映画を観た! という気にさせてくれたのは○。開幕早々始まった“旗取り”など、カット割りで誤魔化さず本当に落ちているのが分かる。他のアクションシーンも同様に燃えるが、とりわけエンドクレジットのNG集や撮影舞台裏の映像を観た時はなおさらそう感じた。こんなのは付け焼刃で出来る芸当ではない、というのが身にしみる。それだけにもっと燃えさせる要素が欲しかったのがつくづく残念でならない。
それでも最後に書いとくと、奪われた仏像を「あんな岩が何だってんだ」と言ってティンの怒りを買っていたジョージが、最後は身を呈して仏像を守っていた、という展開は好きです。
(評価:
)投票
このコメントを気に入った人達 (3 人) | [*] [*] [*] |
コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。