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[コメント] サンダーバード(2004/米)

描くべきものを描かず、内輪の混乱だけを描いて「国際救助隊」が格好良く見えるとでも思ったか? この映画の製作者に対し言ってやりたい言葉→
荒馬大介

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 「テメーらがサンダーバードを作るだなんて100年早いんだよ!」

 ……オリジナルの『サンダーバード』は中学時代にあった再放送(私の年齢を疑う方へ一言。本放送ではありません!)で観て、夢中になったくちである。毎回のように発生する災害シークエンスにハラハラしながらも、数々のメカニックを駆使して人命を救助する国際救助隊の活躍ぶりにハマっていたのを想い出す。しかし今思うと、サンダーバードと聴いてまず思い出すのは緑色の2号なのだが、あれが輸送機だと知った時は正直驚きました。後にも先にも、こんなにカッコイイ輸送機はありません。

 しかし「災害」と書いたが、TVシリーズ32話全てが救助の話かというとそうでもない。偽者の登場によって国際救助隊の存続そのものがピンチになった時はあるが、それは1度だけ。悪人フッドが救助隊を狙うという話は劇場版も含めると6回あるのだが、彼は別に救助隊に恨みがあるわけではなく、最新鋭の技術を極秘に売り渡そうと企むいわば“悪の商人”。その為にはわざと災害を発生させ、国際救助隊が来るのを待つという手段を取るのだ。無論フッドに限らず、その災害の裏には恐るべき陰謀があった、という展開も多く、これは同じくイギリスで製作された『007』シリーズの影響もあるだろう。そう、『サンダーバード』は様々なドラマ要素を持つ画期的な特撮作品だったということなのだ。

 で、今回の映画はどうかというと……正直ガッカリだ。

 もしこれを実写第1弾のスタート作品とするのならば、まず21世紀版の国際救助隊の概要をシッカリ描く必要があるはずだが、話は既に国際救助隊が活躍しているという設定で、いきなり災害が起きて救助が始まる。これで15分。その後は、フッドの陰謀にひたすら翻弄される国際救助隊が描かれるだけで、どんなにメカ描写がカッコよくても全然盛り上がらない。いくら100分以下の映画だからといって、それは無いだろうに。これでもう、この映画は国際救助隊が如何に確固たる組織なのかを描く気が無いということが分かってしまう。

 災害に巻き込まれた人々の苦悩と戦い、そんな人々を助けようとする国際救助隊の活躍。そんな描写があってこそ、サンダーバードのメカニックはより映えてくる。それが決定的に欠けているのだから(ましてや被害者と救助する側が一緒というのではなぁ)、面白くなくて当然なのだ。

 オチも面白くない。最終的に、アランは機械に巻き込まれ死にそうになった悪人フッドを「これが僕の使命なんだ」といって助ける。サンダーバードのヒューマニズムはそんなに甘ったるいものだったのか? 秘密を知った人間に対しては、徹底的に追跡してその秘密を奪い返すのが国際救助隊のもう一つの顔なのだ。だからといって、あの場面でフッドを殺せばよかったのかというとそうではない。逮捕されたフッドなど観たくは無いし、別に生死不明でもいいではないか(TVでは全てそういうオチだった)。いくら続編作る気がミエミエのオチでも、もう少し工夫のしようがあるだろうに。

 結局のところ、映画史上においてダメリメイクの映画が1本増えたというだけだったというのが悲しい。製作者側は、サンダーバード全話をもう一回見直しなさいね。

(評価:★2)

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