[コメント] マインド・ゲーム(2004/日)
映画を見終った人むけのレビューです。
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速く走れる夢や空を飛ぶ夢を見ます。フロイトが言うようにリビドーの裏返しなのか、単にBuck-Tickの聞き過ぎなのかはさておき、そういう浮遊感を具現化してくれるメディアがあるとすればアニメになると思う。
ただ重力からの脱却がアニメの可能性だとしても、同時にそれは現実からの乖離ともなりえ、それが異次元空間を織り成せば、やがて『ビューティフル・ドリーマー』以来ついて回る「現実に帰還するべきか、否か」という命題が顔を出す。
たとえば、諸星あたるは帰還するべきだった。何故ならそこがラムという他人の夢に過ぎなかったからだ。そこが他の誰かの夢の中と解れば帰還したくもなる。でも、クジラの腹の中はクジラの腹の中だ。そこを現実として生きて死んで何が悪い? プレシオサウルスだっているこの空間は、そんなに偏狭な場所に過ぎないのか? そこを捨ててやっきになって帰らなければならないほど、大阪も今の日本も大切な場所なのか? 帰るなら帰るで良いのだけれど、不満なのはこの映画、そんな問い自体が存在していない。これだけ奇天烈な絵を展開しながら、クジラが装置なら、人間がいる場所が開かれた場所というたかだか一般通念に自らが埋没していることに何の疑問も抱いていない。
挙句の果てに、クジラの寿命という副次的に過ぎない言い訳と、「外の世界で生きるべき」に帰着する、この手の映画で百万回繰り返されてきた説教が取ってつけられる。そして、大阪に戻る。こんな結論は、クライマックスのオーバードライブにまったく見合っていない。外界に出るのなら、逆に行くという選択肢は無かったのか? 太平洋に繰り出せばいい、プレシオ君に乗って! そこには、きっと、巨大なる魔神が眠る島とか、でっかい蛾と小美人が住む島とか、どでかいセイウチが現れる島とか、もっとすげえ世界がいっぱい広がってるぜ!!
何処迄も飛ぶ 何処へでも行く わたしの胸にタナトスの花
陽炎に燃え 清らかな空 光の中へ 光の中へ
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