[コメント] 誰も知らない(2004/日)
映画を見終った人むけのレビューです。
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誰か一人の死という結末はもう完全に予定調和的だ。しかし、子供を育てた経験のある者なら、いやそんな経験が無くても殆どの観客はもっともっと悲惨なプロット展開を予想するのではないか。正直に云うと中盤で「『『火垂るの墓』の現代版だ」と早合点してしまった私には徹底して「泣かせ」を回避した画面はある意味肩透かしだった。この状況であればもっとずっと悲惨な危機的画面を用意し、それをお得意のドキュメンタリータッチで突き放して撮ることで、観客の心を揺すぶることも可能だろうが、敢えて回避する選択が行われている。こういう部分でもこの映画は実に狡猾に「現実らしさ」を装っていると思う。いかにも古い映画にありがちな劇的な要素を排除しながらも、実は全編に亘って周到に計算された非現実的な構成を持っている。それは劇的でないことが現代では劇的である(非日常である)というアイロニーもあるが、それ以上に作り手がほしいままにプロットを切り取った、演出を施したという作り物臭さを感じさせる。周囲の「知っていた」人たちが何も行動を起こさない、ということ自体、それが事実に基づいているかどうかなんてこととは関係なく映画として随分と作り物臭さを感じさせるじゃないか。或いは後半の次男・茂の行動がたまらなくスリリングで目が離せなくなる演出なんて「してやられた」という感じだ。
これは決して現代版『火垂るの墓』ではない。『火垂るの墓』が語り口の上でファンタジーであったが、その実多分にリアルな映画であったのに対して、本作は、語り口は「現実らしさ」を装うが、その実純然たるファンタジー映画である。ファンタジーであるという意味において帰結の甘さは納得できるが、徹底的に打ちのめされる爽快感はない。
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