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[コメント] 女学生記(1941/日)

メンデルスゾーン「春の歌」のピアノをバックに、ポプラか、高い木。ティルトダウンして校庭。花壇を横移動しながら二重露光でバスケのシュートをする女子やテニスラケットを振る女子のウエストショットを映し込む。なかなか凝ったオープニングだ。
ゑぎ

 こゝは高等女学校。主要なキャラクターは女学生5〜6人で、皆4年生のクラスメート。あと一年半で卒業、という科白がある。本作は、ほとんど主人公というもののない群像劇だ。キャストのクレジットでは、まず、主要な女学生の配役が一枚に出る。すなわち、右から谷間小百合戸川弓子矢口陽子御舟京子、あと3人ほど挟んで、左端に高峰秀子。しかし、やっぱり高峰が一番目立つ、決めゼリフは高峰、というような位置づけだ。本作の高峰は、ちょっと蓮っ葉で気の強い、メガネっ子というキャラ。ただし、自宅あるいは家庭生活まで見せるのは、谷間、御舟、矢口の3人だけだ。

 例えば、谷間は兄貴−伊東薫と机の取り替えで喧嘩をする場面がある。母親は英百合子で、女は男の云うことを聞いとけばいい、みたいなことを笑いながら云う(私は封建的な考えを強いているというよりも、処世術を伝授しているように感じられた)。

 御舟(後の加藤治子)は、お母さんが亡くなっており、妹弟の母親代わり。お父さんは、女中が見つからない(女主人がいないので)と云う。家計簿(?)を付けながら眠る。

 矢口(後の黒澤明夫人)の自室は広い部屋だ。ベッドに寝ている場面で、名前がオフで呼ばれるが、二度寝してしまう(家族は出てこない)。この後、寝坊で授業に遅刻するシーンが2回ある。それもあって、担任の先生(物理の先生)の御橋公と一番絡むのが矢口だ。

 他の女生徒で目立つのは、谷間と友達で、序盤に北原白秋の詩について語るのが戸川弓子。中盤の農業実習の場面で鶏の雌雄とトサカの話をするのも戸川だ。あとは、駅前で千人針を頼む若い女性−山田五十鈴(特別出演)を見て、学校で皆に縫ってもらえば、明日には千人集まると請け負う女学生が河野糸子。彼女は御舟と仲が良いという設定だろう2人で映っているショットも多い。

 これら女生徒の中で多分一番長く映っているのはビリングトップの谷間だと思う。家族との場面も多い。中でも、家庭科の宿題なのか、家の設計(間取りの図面作成)について母親に話すシーンで、彼女の想像の具現化イメージが繋がれるというのが、特別感がある。あるいは、クラスの中では別グループのように見える御舟に対して、修学旅行に行けるよう気遣うといった一面も描かれ、私は今まで見てきた谷間の中では一番可愛く描かれているように感じた。

 ただし、矢張り高峰は抜群に可愛いし、クラスのリーダのように描かれており(一匹オオカミのようでもある)。例えば、ネズミ退治騒動の場面では、一人、高峰が四つん這いで、ニャーオと鳴きながらネズミを追い詰める、といった見せ場があったりする。それでも、当時すでに国民的アイドルだった高峰が、決して浮き過ぎていず、授業でも旅行シーンでも、一人の女学生として画面におさまっているのが、よけいに有難く私には感じられた。

 さて、画面造型的な一番の見せ場は、やはり、修学旅行のシーンだろう。行先は、掲示板のショットで、確か、潮来、銚子と書いてあったと思うのだが、多分利根川なのだろう、女学生をいっぱいに乗せた遊覧船と、船上から見た大河の景色が壮観だ。

(評価:★3)

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