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[コメント] 堕天使のパスポート(2002/英)

裏『イン・アメリカ』と言う所か。移民の現実を知らんから何とも言えないが、サスペンスとしても、告発(?)映画としても踏み込みが足りず。こういう題材に関心するも、製作者は娯楽の材料としか考えて居ないようだ。残念 2004年11月23日劇場鑑賞
ねこすけ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







イン・アメリカ』ではアメリカに渡ったアイルランド移民(監督自身の話)の物語。日々の過酷な生活の中に小さな希望を見出す話。対してこちらはロンドンに於ける移民の過酷な生活を、希望もへったくれもなく・・・と言うと嘘になるけど、過酷に描く。

まぁ前者は「定住する為」で、後者は「出る為」なので、その過酷さは恐らく後者の方が厳しく思えるんだけどね。良く知らんけど。

ミステリー風味。中々健闘はしていると思うし、こういったエンターテイメントとして仕上げるのも別に嫌いではないのだけど、こちら側に力を注ぐあまり移民の現実を映す映画と言う役割(と言うのは筋違いかな?)が希薄になっている。勿論映画はエンターテイメントであるべきなのだが、ミステリーを描く事に終始してしまうのでは、それでは中身の無い作品に落ちかねない。

中々バランス良く配している脚本ではあるように思えるが、結局詰め込みすぎと言うか、ミステリーに傾倒しすぎた、と言うか、見終わって特に何も残らないのが、扱っている物が重いだけあって非常に痛い。

最終的にカタルシスを客に与えなければならないのは、映画=娯楽としての宿命なのかもしれない。だが、この映画は英国インディペンデントなんちゃらの最優秀作品賞を受賞しているそうだが、インディペンデント作品ならば、否、だからこそ踏み込むべきではなかったのだろうか。その“重い現実”に。

上映中に少しばかり客が席を立つ事を覚悟の上で、“移民の真実”を描くべきではなかろうか?(俺は何も知らないけど、恐らくはコレより過酷な物がアルはずだ)第一、そこで立つ奴は移民の現実を直視しない奴、と考え切り捨てる、そのくらい極端でもいいから、告発するぐらいの気持ちでこーゆー映画作れよ!ミステリーを絡めながらでも出来るはずだ。

正直、“過酷な日常の描写”もハリウッドメジャー映画が少し踏み込めば描く事が可能な領域に思え、移民の方々に失礼な言い方になるし、俺はこんな世界は断固ゴメンだけど、少々月並みに思えた。

ラスト、支配人をまんまと騙して腎臓摘出を行う。この辺り、ミステリー作品なので客にカタルシスを与えるべきシーンなのだろう。だが、ココまでこの支配人を悪党として描きながらも「腎臓を摘出したお陰で助かる人も居る」と言う現実を観客に突きつけておいて、観客の倫理を不安定にさせているにも関わらず、最終的に少々安易な勧善懲悪に陥った所に失望感を感じた。

別にアンチハッピーエンド主義者ではないのだが、安易過ぎないだろうか?

劇中、ロンドンはずっと曇り。そして、華やかなショッピング街は一瞬程度しか写さず、下町や貧困層の住むアパート等々を写す。ホント、これだけ映像面でロンドンの暗部(観光客から見えない場所)を強調しておきながら、娯楽に走ってしまう辺り、インディペンデント作品なのにもったいないなぁ、と思う。

ラストシーン、この作品で唯一太陽が出るシーン(だったと思う)。

空港で娘に電話する主人公。NYへ旅立つオドレイ・トトゥ

やっぱ安易過ぎないか?爽快なラストのつもりかもしらんけど、コレじゃ見事な消化不良。

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)ゆーこ and One thing[*]

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