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[コメント] 堕天使のパスポート(2002/英)

移民や宗教といった問題にもう少しどっしりと向かい合った人間描写が必要である。視点はマイノリティにしっかり目を向けているだけに勿体無い。
Keita

 移民問題を扱った着眼点は鋭い。登場人物も、アフリカ、トルコ、中国といったイギリスに生れた人ではない人物を中心に沿え、人種のるつぼとして表現している。マイノリティをしっかりと見つめたという点に安易さはなく、これは評価すべきだ。

 しかし、ストーリーは破綻していると言わざるを得ない。サスペンスとしてスピーディーに展開することは構わないが、面白い人物設定をしたにも関わらず、あまり心理描写を追求しない。さらに中盤以降、現実味が薄い突飛なストーリーが進む。

 近年の作品では同じくイギリス人のマイケル・ウィンターボトムが真摯に難民問題を扱った『イン・ディス・ワールド』や、アメリカを舞台にイラン移民の家族を宗教性を巧く交えた描いた『砂と霧の家』など、移民などを主題にした秀作がいくつか製作されているが、それらに比べてこの映画は人間描写を怠りすぎに思える。

 ただ、収穫もあった。フランス人ながら違和感なくトルコ人を演じたオドレイ・トトゥだ。可愛らしい顔立ちを生かす『アメリ』のような役が似合うのは確かだが、こういったその可愛らしさを隠蔽するような作品にも多く挑戦した方が、今後女優として活躍するためには役に立つはずである。

(評価:★3)

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