[コメント] 黒い河(1957/日)
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全編ギャグ映画にすれば良かったのに。
米軍立川基地噺。半円のアーチは頻出するが本作はセットっぽい。近隣のボロアパート群像。進駐軍に食わせて貰っている黒眼鏡の東野英治郎ほか怪しい連中のなか「電気代は米軍の分も日本が払っている、ニッポンは独立国です、恥ずかしいことです」と訴えるのが宮口精二の在日コリアン夫婦というイロニー。電気代も汲取り料も住人で案分、それなら亭主は工場でしかウンコしませんと宣誓する。
東野はどうやって米軍に食わせてもらっているのかの実地描写となり、米兵を夜中に基地の鉄柵突破させて案内、米兵のポン引き宿のやり手婆あの三好栄子が英語を駆使するという強烈なギャグが素晴らしかった。同行した永井智雄はパンパン嬢のなかに自分の情婦の淡路恵子を発見して動転している。
山田五十鈴が仲代に発注する地上げ話。「砂川みたいにもめてみろ」と仲代の科白があるが、大して穿っていない。山田五十鈴らが役人の織田政雄をまんまと騙す件があるが、どう騙したのかよく判らない。出鱈目に集められた判子でもってアパートは取り潰しが始まる。この群像劇はもうひと波乱ふた波乱あれば面白くなりそうで、半端に終わって残念だった。
松竹が太陽族意識したような三角関係噺は詰まらない。仲代に強姦されて翌日結婚してくださいと云い寄る有馬稲子。彼の情婦になって渡辺文雄に「私は不潔な女。でも貴方が好き。私は自分が好きになるために貴方が好きなのです」なんて手紙を書く。ヤッタら女はついてくる噺はこの時代、なぜこんなに多いのだろう。
そのようにして有馬稲子と桂木洋子のどっちがいいかは大問題と思われる終盤、ラストの米兵の仲代ひき逃げはえらく下手な撮影なうえ、逃げ去る有馬の女ごころはついに意味不明。訳判んなくなって放り出したようにしか見えなかった。
駅舎の大きな木造階段は高井戸駅か。有馬と渡辺が再会して途中下車する駅の件、集音マイクが映っているように見える。当時の連れ込み宿は西瓜を出したのだろうか。仲代はアロハみたいなシャツに白いスーツというギャング然としたなりだが、舎弟たちは半裸に晒し巻いている。ジャジーな音楽がいい。「黒い河」って何のことだったのだろう。
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