原作を読んでないので作品自体が意図するモノがわからないのだけど、この作品は、膨大な内容からところどころ映像をつまんで繋げただけのような展開で非常に断片的。ＤＶＤで見たのでその断片がどう繋がっているのか何度か確認してみたのだが、やっぱり繋がらない。

もともと、最初に出てきたニュースが妹の事件と違うということも、私にはしばらくわからなかった。そんな混乱の中で見ていて、弟はアンテナがどうちゃらいっておかしくなっていて、母親は宗教に頼ってるのはわかった。だけど、同居していた若いおじさんと父親とがまたゴチャゴチャになってくる。自殺したのどっちだったっけ、とか。心霊かぶれの取材ディレクターも意味を成さないし、家の前に立つタイトルの「アンテナ」に意味づけしたような不気味な鉄塔も、何を象徴するのかよくわからない。風俗サービス業としてのＳＭプレイからは逸脱したようなやりとりの中で主人公がトランス状態になってたら、なんだか勝手に解放されちゃって解決。夢と現実がゴチャゴチャになりつつ、「アンテナ伸びたね」って、え？　夢の話なの？　結局、妹はどうなっちゃったの？

自傷やＳＭシーンは、何だか「痛そうな絵作り」でしか目的を果たしていないようで、それが逆に、悪趣味の露悪に見えて不愉快。この監督の作品はこれが初めてなのだが、『鬼畜大宴会』などのレビューを読むと、こうした悪趣味な映像をただただ無意味に並べるのが作風だったりするのかな？　それなら私が退屈に感じたのは単なる趣味の問題なんだろうけど、それならそれで、他にもっと丁寧な悪趣味作品も一杯あるからなぁ。