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[コメント] モーターサイクル・ダイアリーズ(2004/米=独=英=アルゼンチン)

「これぞ映画だ!」というワクワクする最高の瞬間の数々と、それを裏切るような雑な編集。だが・・・
ぐるぐる

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







つながりの悪い編集にイライラしながら、まあ、現代日本の時代劇ほどでは無いにしても、50年前の旅を再現するためにはロケの制限が随分あるのだろう、などと考えながら見ていた。尺とか金とか日程とかの「現実的な制約」もキツかったんだろうなとか。それで、まあ、見ているうちにそんなことを考えさせるようでは映画としてどうなのよ、などと思っていた。

各シーンごとに見れば、自然な演技が素晴らしい主役の二人と彼らが出会う人々と風景とをじっくり見せて、自ずからその空気感に引き込まれるだけに、そこから唐突なつなぎで全く空気の違う次のシーンへ飛ばされるのには強い抵抗感があった。つまり、シーンごとの出来事がこちら側でちゃんと消化されないまま、次!となってしまうようなすっきりしない感覚。

後から考えると、それはある程度意図的な演出であり、そうやって内に溜まった「モヤモヤ」を主人公と共有させられてきたからこそ、クライマックスの「がむしゃらに川を渡る」シーンでそれを一気に開放し感動が倍増する、のかもしれないのだが、それにしてもこれでは手放しで成功とは言えないだろう、などと半分距離を置いたような状態で思っていた。

ラストになると、この旅で出会った人たちがモノクロの画面で回想される。エピソードの中では主人公たちに好意的だったにしろそうでなかったにしろ、彼らは一様に淡々とした表情で映し出される。この抑制された演出が「感無量」を演出するわけだ。なあに、最後になってこんなもんで辻褄を合わせようったって、その手には乗れないな・・・

・・・と思った途端、いきなりホンモノの登場である。これには参った。何の説明がなくても、一目で50年前に若きチェ・ゲバラと共に旅をした、あの「ふとっちょ」ご本人だと判ってしまうのだ。その表情!今は80歳を超えて皺だらけの顔。50年前の旅の終わりに飛び立つエルネストを見送ったまさにそのふたつの目の先に、離陸する飛行機のカット・バック。こんなものを最後に持って来られたのでは無条件降伏するほか無い。

無鉄砲な冒険旅行に出かけられるような若さがもう自分には無いことを思い知る歳になった身にしてみれば、今まで2時間見てきた物語が、この短いカットだけで一瞬にして、他人事で無く自分の中の物語として生き始めてしまう見事なエンディング。これぞ映画だ!

(評価:★5)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)煽尼采

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