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[コメント] クレモナのバイオリン職人(1909/米)

10分。主要人物は、主人公のバイオリン職人と、同僚でライバルに見える友人、及び師匠の娘のわずか3人と云っていいと思う。この娘が若き(17歳頃の)メアリー・ピックフォードだ。
ゑぎ

 師匠や他の職人たち、町の人たちも出てくるが、プロットに何ら影響を与えないモブの役割しかない。また、主人公は肢体不自由者だが(足が悪い)、職人としての腕は一番であり、当然ながらピックフォードに恋をしている。しかし、彼女は主人公のライバルと相思相愛である、という設定がごく最初のうちに示される。

 「場」もほゞ次の3つだけだ。開巻は主人公の部屋。画面右に開け放たれた窓があり、窓に同僚の顔が見え、次にピックフォードが窓から白い花を主人公に投げるショット。次のカットは職人たちの作業所で、主人公の部屋は同じ建屋と思われる。この作業所では、他の職人たちや親方の目を盗んで、ピックフォードらがキスしようとするシーンがある。そして3つ目が、町の広場か、大きな門の前の空間(もしかしたら、作業所の建物の前か)。この広場で、町の人びとが集まる中、毎年の恒例らしいベスト・バイオリンのコーンクールがあるのだが、なぜか、今年は優勝者にピックフォードと婚約する権利が与えられる、というようなルールが設けられたことにより、プロットがドライブする。

 本作にはショットの工夫はあまりなく、全てスタジオ撮影で、固定のフルショットか、少し寄って、くるぶしの上あたりからのショットばかりだ。そういう意味で、構図の面白さなんかも無い。本作に限ったことではないが、登場人物は皆かなりオーバーアクトを繰り返すので、人物的造型という面での深みにも欠けている(なんか白ける)。だが、私が面白いと感じたのは、上にも書いたように、ファーストカットで白い花がピックフォードから主人公へ渡されるのだが、ラストカットでは、主人公はピックフォードの白いハンカチを持っていて、顔にあてるという演出があるという点。つまり、ピックフォードにまつわる白い小道具の反復。さらに、中盤には主人公はピックフォードのエプロンに顔を近づけるシーンもあり、これもラストの白いハンカチの使い方に結びついて記憶を刺激される 点。このような「あらすじ」とは別次元の、画面の細部の刺激を演出で創出するところが、映画らしさだと感じる。

(評価:★3)

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